表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Intrusion Countermeasure:protective wall  作者: kawa.kei


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

827/870

827

 タヂカラオの指揮もあって南側はそこまで危機的な状況ではなかったが、北側はそうもいかなかった。

 

 「足を止めるな! 押し込むぞ!」


 ヴルトム率いる北側の部隊は比較的、高ランクのプレイヤーを割り振られているだけあって総合力という点は南側に比べれば勝っていたが、指揮に対して高い適性を持ったプレイヤーが不在だったのだ。

 その為、ヴルトムは一点突破を狙って敵の防衛線へ対して突撃をかけていた。


 エネミーの統制が乱れていた事もあって突破自体はどうにかなったのだが、結果として基地で待ち構えていた敵性トルーパーの狩場に飛び込む形となったのだ。

 無数の砲火に晒され、徐々に数を減らしていくヴルトム達。 


 ――そんな中、ホーコートはぼんやりとした気持ちで機体を操っていた。


 不思議な感覚だった。 体が勝手に動くようだ。

 どうすれば最適に動けるのかが感覚で分かる。 

 敵機のミサイル攻撃を引き付けてマシンピストルで迎撃。 即座にバトルライフルにスイッチして応射。

 

 撃破。 四基のエネルギーウイングを小刻みに噴かして敵の攻撃をコンパクトに躱す。

 そして淡々と応射によって撃破。 

 敵機の大半はノーマルのソルジャーフレームを改良したマイナーチェンジ機だ。


 このオビディエンスフレームに比べると性能面では劣る。 

 マイナーチェンジという点では同じだがこちらはプラスフレームが土台になっている以上はその差は明白だが、物量という分かり易い差があった。 

 

 今の自分は絶好調だ。 狙った位置に弾が当たり、敵の攻撃を頭よりも体が反応して躱す。

 以前と比べて凄まじく強くなった事が実感できる。 

 本来なら拳を握って喜ぶ場面のはずなのだが、不思議な事に何も感じない。


 精々、あぁ、やれてるなといった事実をぼんやりと認識できるだけだ。

 何だかおかしかった。 違和感を自覚はしているのだが、明確に言葉にできない。

 それを深く考えれば考えるほどに頭がぼんやりとするのだ。 


 でも、体は勝手に動く。 本当に不思議だった。

 最近、手に入れたばかりのオビディエンスフレームと武装もずっと使っているのではないかと思うぐらいに馴染むのも気になったが、気にならなくなった。 


 何故なら考えるとぼんやりしてどうでもよくなるからだ。

 それを考えるならもっと根本的な疑問もあった。 


 ――今は楽しいか?


 そう尋ねられればホーコートは何と答えるだろうか?

 少し前まではそうでもなかった。 「星座盤」は凄いユニオンで凄いチームだ。

 リーダーのヨシナリ先輩は本当に凄い人なんだ。 


 人数一桁の弱小ユニオンなのにイベントではボスを撃破して見せた。

 ホーコートは素直に凄いと思った。 自分もそうなりたいと感じて「星座盤」に入ったのだ。

 ユニオンに入ってからは碌に活躍できなかったが、ホーコートにとっては熱い時間だった。


 結果こそ出せなかったが、あのチームで何かやってるんだと考えるだけで熱い何かが込み上げるのだ。

 もっと、頑張ろう。 もっと強くなりたい。 そんな気持ちで走り続けた。

 だからあんな女の誘いに――あぁ、違う。 何を言ってるんだ俺は??

 

 オビディエンスフレームは抽選で当たったんだろうが。 女? 誰の事だ?

 さっぱり分からない。 そんな事よりも目の前の戦いに集中しないと。

 でも、集中する必要ってあるのか? 何故って? 


 体は勝手に動くんだからやる事だけ考えてればいいじゃないか?

 分からない。 何がおかしいのかも分からなかった。 

 纏まらない思考の中、それでもホーコートの精神は淡々と機体を操り続ける。


 頭はぼんやりするのに自分の行動の結果だけは見えるのだ。 

 バトルライフルを連射。 当たるなこれはと思っている間に敵機を射抜いて撃破する。

 攻撃に関してもこれは処理できる。 これは躱さないと不味い。 


 そう判断しながら機体を左右に振る。 我ながらそこそこ活躍できているのではないだろうか?

 敵も似たような事を考えたのか火線の一部が彼に集中し始めたのだ。 

 この環境、光学兵器は割と減衰しやすい事もあって距離があれば少々の被弾は問題ない。 


 ただ、ミサイルや実弾兵器はその限りではなかった。 

 加速しながらバトルライフルをマウントして二挺のマシンピストルでミサイルを迎撃。

 数が多すぎる。 このままでは躱しきれない。


 攻撃密度から何となくダメージは読み取れる。 あぁ、これはやられるなと冷静に考えた。

 理由は簡単で処理が追い付かないからだ。

 

 ――まぁ、いいか。


 ぼんやりした頭でホーコートはそんな事を考え――


 ――それは困る。 まぁ、ズルしたのはあの子が先だし、私も似たような事をやってもいいわよね? 


 不意に何か声が聞こえたような気がした。 

 いや、聞こえているのだが、何故かホーコートの脳はそれを音声と認識しない。

 聞いた端から記憶から零れ落ちるのだ。 


 ――可哀そうなお人形さん。 馬鹿な女に騙されて安易な力に手を出すような薄弱な魂に興味はないのだけれど、私、負けるのが大嫌いなの。 だから、あの馬鹿女の仕込みをもう少しだけ使わせてあげる。 


 精々、頑張りなさい。 ホーコートの視界に無数のウインドウが明滅。

 凄まじい数のタスクが処理され―― 


 ――どうせ覚えられないけど一つだけ忠告してあげる。 魂は燃焼してこそ輝くの。 その輝きこそがロジックでは説明できないパフォーマンス生む。 だから、火種を探しなさい。 あなたの全てを燃やしても良いと思える何かを。 そうすればもしかしたら人形から人間になれるかもね?


 MODのリミッター解除。 作戦目的、敵性トルーパー及びエネミーの殲滅及び、友軍機の支援。

 ライブラリーにアクセス。 予測演算システム起動。 データ照合中――完了。

 瞬間、ホーコートの見える世界が変わった。 視えるのだ。


 無数の赤いラインが。 それはこれからミサイルや銃弾が飛んでくる軌道。

 ラインの色が徐々に濃くなっていく。 

 それは攻撃が飛んでくるまでの猶予時間を表しており、濃い順番に躱せばよい事を示していた。


 ホーコートはそれに従って機体を操る。 

 彼の意思を反映した機体はまるですり抜けるように銃弾の雨を躱し、ミサイルを的確に処理。

 即座にバトルライフルへとスイッチし、味方機を狙う敵機を削って地上部隊にかかっている圧力を弱めようと動き出す。 


誤字報告いつもありがとうございます。


宣伝

パラダイム・パラサイト一~二巻発売中なので買って頂けると嬉しいです。

Kindle Unlimited、BOOKWALKERのサブスク対象にもなっていますのでよろしければ是非!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 ああやっぱりというかホーコートにいけないものを教えている人って複数人居たのか、だとしてもそれぞれ思惑が違うんすね?今回の人はホーコートがただのMODの受け入れ先って扱いじゃなくてあわよくば本来の自分…
ホーコートセカンドを作ったのはこの人だもんな あのアツくなれるようになったホーコートが帰ってくるかもしれないのか
魂、魂ときたか ここにきてわざわざプレイヤーを育ててる意味がちょっと見えてきたか 無人機で良さそうなところをMODユーザーにしてるのもこの辺りが関係してそうだなぁ アメリアは機体してないけど、読者とし…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ