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――というかそれ以上に敵がヤバい。
指揮特化、メイン武装は長物。 ホバー移動という挙動はマルメルやアリスに近い機体構成だ。
頭部と背面のレドームは攻撃ではなくエネミーやミサイル等の外部に対しての干渉を意識した代物だろう。 巨大なだけあって効果は絶大だ。
シックスセンスで観測すると広範囲にどこかしらと通信している事は分かるが、どのような処理をすればあれだけのエネミーや基地設備を操れるのか? 特にミサイルに関しては捕捉されるまでかなり正確に当ててきていた点からも細かな制御ができる物と思われる。
明らかに中~長距離戦仕様にも関わらず近接特化のニャーコをあっさり返り討ちにした点も侮れない。
ただ、火力はあのレールキャノンに頼っている所為か悪魔型に比べると戦闘能力という点はそこまで怖くない。
――まぁ、グロウモスさんが抑えてくれてるからなんだけどなぁ。
相手の発射した弾体を悉く正面から撃ち落としている以上、ポンポンとケイロンの攻撃に対して逃げ回るしかない。 あの手の相手は何かしらの奥の手があると思われるが、仮にないなら捕まえれば勝てる。
仮にそうなってくれればミサイルとエネミーの群れの両方を処理できるのだがそう簡単に行かないのがこの手のミッションだ。
そのエネミーの群れはこちらよりも近くの敵を優先している様でタヂカラオやヴルトム達を追いかける形で多くが反転している。 注目したいのは途中まではしっかりとこちらの突撃を受け止めるような陣形だったにもかかわらず、衝突の少し前に足並みが大きく乱れたからだ。
結果、陣形が崩れて突破が容易になった。 理由は明らかであの指揮官機の居場所を割ったからだ。
能力はエネミーの操作に特化した機体で個々に対してかなり細かい命令を出せる。
欠点はリアルタイムで指示を出す関係で思考のリソースの大部分をそちらに振る必要があるといった所だろうか? 裏を返すと指揮に専念さえさせなければ、大雑把な命令しか出せない。
グロウモス達のお陰で強みの大部分は殺せたと言っていいが健在である以上はまだまだ安心はできなかった。
複数のエンジェルフレームが散開。 メガロドン型を挟むと同時に攻撃を開始。
「光学兵器は効果がない。 実弾兵器でとにかく削るんだ!」
タヂカラオは指示を出しながらエネルギーリングをばら撒く。
それによりメガロドン型が吐き出したミサイルや銃弾の速度が大きく低下。
サイズ差があり過ぎて本体には効果がないが、攻撃を遅らせる事で味方の回避する為の時間を稼ぐ事ができる。
メガロドン型と先に遭遇する事を想定して一部のプレイヤーには実弾兵器に偏った装備で参戦させたのが幸いした。
エンジェルフレームの最大の強みである光学兵器を軒並み外して重機関銃やグレネードランチャーやロケットランチャー装備のランク戦ではまずお目にかかれない装備構成の機体がエネルギーウイングを噴かしてメガロドン型の周囲を飛び回る。
とにかく正面には立たず、側面に移動して実弾兵器でとにかく削り、分散して的を絞らせない。
そして光学兵器装備の機体は地上の敵に対して攻撃を仕掛ける。
高出力のレーザーで地上を焼き払い。 地上部隊の進路を切り開く。
そして突破した地上部隊は基地に突入してミサイルを景気よく打ち上げているエネミーの排除。
成功すればオペレーターと戦っているメンバーの負担が大きく減る。
簡単にやられないとは思うが今回は二機も居るのだ。 一刻も早く、この状況を打開しないと不味い。
以前にやられた身としてはリベンジを狙いたい気持ちはあったが、ミッションに失敗してしまえば目も当てられない。 やるにしても役割を果たしてからだ。
メガロドン型への対処は今の所は上手く機能している。
正面に立たないだけでなく、砲撃をエネミーの群れに向けさせる事で数を減らしつつ味方への被害を抑える。 タヂカラオの眼下では地上部隊が次々に基地へと突入していき、光学兵器装備のエンジェルフレームがそれを追いかける。
本来ならそのまま敵の追撃の抑えに回らせたのだがそれは難しい。
何故なら――無数の爆発音。 戦闘音を聞けば何が起こったのかはすぐに分かった。
銃声と砲声。 敵性トルーパーだ。 待ち構えていたのだろう。
――なんて悪辣なんだ。
トルーパーが出てこないから基地内に配置しているんだろうなと思っていたら案の定、待ち構えていた。 ご丁寧に敷地に入って来た所を狙い撃ち。
地上部隊は足を止めての撃ち合いを強いられる。 焦っているのかやや前のめりだ。
「落ち着いて一機ずつ撃破。 前に出過ぎるな!」
そう指示を飛ばすが、無理もなかった。
背後からはエネミー群れ、正面は敵性トルーパーによる防衛線。
上で抑えているエンジェルフレームが一機、焦りから突出。
おそらくは防衛線を飛び越えてミサイルをばら撒いているエネミーを削ろうとしたのだろう。
凄まじい数の対空砲火に晒されて撃墜される。
――これは明確な指示を受けてるな。
イベント戦の時や過去に行った同じミッションでは本当に散発的に仕掛けてくるといった様子で余り組織的には動けていなかった印象だったのだが、今回に限っては統率が取れすぎている。
「あの指揮官機の仕業か」
それ以外に理由が思いつかない。
過去にもオペレーターは出現したのだが、あの機体に関してはほとんど情報がない。
何故、ヨシナリと組んだ時に限ってこんな厄介な敵ばかりと遭遇するのか。
いくら何でも引きが強すぎる。
彼は何か強敵を引き寄せる因果のような物を背負っているのだろうか?
そんな疑問を抱きたくなる程度には苦しい戦いだった。
だが、それがいいとタヂカラオは考える。
確実に勝てる戦いも悪くないが、薄い勝機を抉じ開けるような戦い、死力を尽くす戦いは、あまり論理的ではないが魂が燃えるような不思議な感覚がするのだ。
そう、燃える。 ゲームとは言え、自身の能力の全てを駆使して仲間と共に同じ目標へと突き進む。
勝利の味は格別だがその反面、敗北の味はとても苦い。 だからこそ真剣になれるのだ。
遊びだから気楽にやれ? 悪くない考えで、以前のタヂカラオもそれが正しいと思っていた。
だが、これを知ってしまった以上、以前までの自分には戻れない。
「はは、面白くなってきたじゃないか」
だから、この苦しい戦いにそう言って笑うのだ。
誤字報告いつもありがとうございます。
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