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――それもあるけど明らかに見に行ってるな。
ユウヤの性格上、サポートに徹する事などあり得ない。
自分で仕留める事を狙っているはずだ。
前情報があるので動き自体に迷いはないが、見極めたいといった所だろう。
ヨシナリも相手の回避先にアシンメトリーを撃ち込んで挙動の制限に力を入れるが簡単に当たらない。
悪魔型のスペックは一通り頭に入っているが、何よりも特筆するべきはオペレーターの技量だ。
前の時に出て来たドローン使いも大概だったが、こいつもかなりの実力者。
ランクで言えばSランク相当だろう。
ただ、ドローン使いと違って挙動に遊びがある分、こちらはやや評価が落ちる。
戦い方に関してはふわわとぶつかっているのを見ればなるほどと理解できてしまう。
超反応と突出した戦闘センスが土台となっている動きはふわわとよく似ていた。
回転の早さを理解してふわわは小太刀の二刀流に切り替えて回転を上げて打ち合う。
空中にも関わらず両者とも推進装置を器用に使って踏み込みを再現しており、接近戦のスキルには大きな開きがない事が分かる。
「はは、速い、速い! えぇやん。 ヨシナリ君、こんなんと戦ったん? 知ってたら前のイベント出たんやけどなぁ!」
ふわわは楽しいと言わんばかりに斬撃を繰り出し、敵機はそれを正面から押し返す。
技量自体に開きはないが、機体の性能に大きな開きがある以上は押し切るのは難しい。
ただ、ふわわ自身もそれをよく理解しており、相手の嫌がる行動を取っていた。
具体的には鍔迫り合いに持ち込もうとしている。
そうすれば足が止まり他からの攻撃を受けやすくなるからだ。
一対多数の場合は足を止める行為は非常に危険である事を相手はよく理解している。
その為、打ち合いには余り付き合わずに蹴りで追い払う。
敵機の短剣は紫電を放っており、下手に接触すると電流によるスタン状態になる可能性があるのだが、ふわわの場合は強化装甲のお陰で無効化できている点からも前に出るのは全体的にもありがたい。
――それに――
「一回見てる相手だから前ほど怖くないぞ!」
「それに俺達も強くなってるしなぁ!」
ツガルの機体、ボーディングパイクが機体の各所からブレードを展開し、高速回転しながらの突進攻撃を繰り出す。 敵機としては受けて処理したい所だが、ヨシナリとユウヤが即座にカバーできる位置にポジショニング。 足を止めたら狩りに行くぞと圧をかける。
回避先にベリアル。 対処に動きを止めた瞬間、分身が複数体出現。
五体の分身が全方位から襲い掛かるが、敵機は転移で躱す。
――見えてんだよ!
転移先にアシンメトリーを撃ち込むが、短剣でエネルギー弾を切り払われる。
ふわわみたいな事をしやがってと思いながら即座に移動。 高速戦闘である以上、攻めるにせよ守るにせよ足を止めると文字通りおいていかれる。
空は迎撃される無数のミサイルの爆発で本来なら真っ暗なこのフィールドが明るく照らされており、マルメル達の奮戦が伝わって来る。
攻めきれていない状態ではあるが、今の所はこれで問題はない。
現状、この戦場には分かり易く三つの脅威が存在する。
オペレーター、降り注ぐミサイル、大量のエネミーだ。
状況を改善する為にはどれかを処理しなければならない。
オペレーターを処理できれば勝ったような物だが、これは現状は難しい。
抑えるだけでも上出来の状態ではあるので仕留めるのは余り現実的ではなかった。
ミサイル。 これは近隣の基地複数に配置された無数のエネミーがばら撒いていると思われる以上、基地まで行って直接叩かなければならない。
飛んでくる方角から逆算すると大体、四か所ぐらいの基地から飛んできていると見て間違いない。
それをマルメル達が大部分を処理する事によって基地の攻略に向かったメンバーの被害は最小に減らせているが、完全に無効化する事は難しい。
これに関しては対症療法でしかない以上、頑張ってもらうしかなかった。
最後に基地。 位置は変わらないが種類はランダムという事もあって何が出て来るのかが分からない。
当初は二か所同時に仕掛けて生産拠点なら陥落させて橋頭保、通信設備と直通通路付きの大型拠点の場合は様子を見てから仕掛けるという流れだった。
特に後者はメガロドン型が常駐している事もあってその辺りの見極めを済ませてからのつもりだったのだ。 オペレーターとのエンカウントも想定していた事もあって押し切らずに丁寧に処理しようという考えもあってだったのだが、開始数秒で現れるのは流石に想定外だった。
――が、こうなった以上は対処するしかない。
タヂカラオかヴルトムが生産拠点を見つけて落としてくれればありがたいのだが、この様子だと色々と不味そうだった。 タヂカラオの方にはメガロドン型が出たという事は直通の拠点。
ヴルトムの方はそろそろ見えてくるはずだが――
『突破したぜ! あぁ、クソ、通信設備だ!』
「お疲れのところ悪いがそのまま仕掛けてくれ、無理に陥落は狙わなくていい。 ミサイルをバラいている連中の処理を優先で頼む」
『分かった。 何とかやってみる』
ミサイルを減らすだけでもマルメル達の負担が減る。
そうすればオペレーターの処理に人数を割ける事もあって、ヴルトム達の役割は大きい。
特に例の指揮官機を早めに処理してしまいたかった。 そうなればエネミーとミサイルの誘導が出来なくなるはずだ。 後は残った面子で悪魔型を袋叩きにしてしまえばいい。
悪魔型に関してはふわわとベリアルを軸に拮抗できている点から抑えるまではどうにかなるが、撃破となると手が足りない。 それに下手に追い込むと例の強化装甲を使ってくるはずだ。
そうなると今のメンバーでも手が付けられなくなる。
だから、戦力が整うまでは引き延ばしに注力するのが正しいはずだ。
指揮官機に関しては情報が少ない事もあってもう少し見たい気持ちはあったが、グロウモス、ケイロン、ポンポンと彼女が連れているメンバーだけで当たっているのだが――
レーダー表示を見るとほぼ全滅していたので実質三人で相手にしているような物だった。
ケイロンが機動を担いつつ接近しつつ銃撃。
グロウモスが相手の攻撃を処理、ポンポンがシックスセンスで情報支援。
即席の組み合わせだったが、連携としての完成度は高い。
誤字報告いつもありがとうございます。
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