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さて、ポンポンなら時間はかかるかもしれないが発見はしてくれるだろう。
問題はそれまで他が持ちこたえられるかだ。
北はヴルトムが指揮を執っているので問題はないと思うが、南は「豹変」や「思金神」から来たプレイヤーとの混合という事で足並みが合わせ辛い。 その為、空中分解の危険があった。
つまり手綱を引く人間が必要なのだ。
「要は僕に行けって事だろう?」
「よろしくお願いします」
この場での適任はタヂカラオしかいない。
本音を言えばオペレーター撃破に人数を使いたいのだが、このミッションの目的は中枢の破壊なのだ。
目の前の敵を撃破しましたが部隊は壊滅しましたでは話にならない。
状況の打開と味方の損耗を抑える事を並行しなければならないのだ。
「突破までは何とかなると思うけど、基地の陥落までは保証できないよ」
「はは、そのまま攻め落とすつもりだったんですか?」
「ま、ここはちょっといい所を見せる場面かと思ってね」
そう言ってタヂカラオもその場を離れる。
「君の事だ。 油断はないと思うが気を付けたまえよ!」
「お互いにベストを尽くしましょう」
――これでいい。
タヂカラオを見送ったヨシナリはやるべき事をやったと意識を目の前の敵機へと移した。
後はあいつをどう料理するかだ。
前回は自爆してようやく仕留めたが、今回は仕留めた上で生き残ってやる。
力強く拳を握ると機体を加速させた。
――急がないと不味い。
ポンポンは機体を加速させながらセンサー系の感度を最大。
目視に頼れない以上、搭載されたシックスセンスの探知項目だけが頼りだ。
彼女の役目はこの状況を操っているであろう敵機を探し出して仕留める事。
最悪、居場所を割るだけでも打開への道が拓けるのだ。
責任重大な役目だと少しの気負いはあるが、やる事は変わらない。
まずは考える所からだ。 操っている奴が居るのは何処か?
確実に何処かに隠れている。 シックスセンスから逃れる事は難しいが不可能ではない。
ステルス系の機構を使用し、動かなければ発見への難易度は上がる。
確実に居るのは間違いない以上は探せば見つかるのだ。
考える。 隠れるならどこだろうか?
条件を絞れ。 ここは目視は使えない以上、敵もシックスセンスと同等以上のセンサーシステムを積んでいると見て間違いない。 つまり視界に関しては同等以上。
エネミーや拠点の武装を遠隔で操作している点からも特化していると見て間違いない。
つまりこちらより、索敵、隠形の面では上。 その上でどこに陣取るか?
相手の思考をトレースして考えろ。 仮に自分が相手の立場ならどこに居座る?
戦場を俯瞰できる位置だ。
味方が敵の只中で戦っているので、巻き込まない為に動向は把握できる事は最低条件。
――駄目だナ。 まだ足りない。
該当箇所が多すぎる。
はっきりしている条件はこちらの動きが俯瞰できて、味方機の動きを把握できる事。
後はエネミーを操る為にはある程度の距離は必要と思われるが、エネミーとして用意された機体なのだ。 こちらの想定を軽く上回って来る可能性は高く、既存機体の枠で括るのは危険だった。
他の絞り込みの条件は何だ? 自身の安全の担保?
だとしたらもっと離れた位置? それとも木を隠すには森という言葉もある。
突っ込んで来るエネミーに紛れている? だとしたら発見は困難だ。
「――あぁ、駄目だナ。 焦ってる」
思わず呟く。 思考が変に固まっている。 ここは誰かに意見を聞くべきだ。
こそこそと隠れてこんな陰湿な事をしてくる奴なんてきっと性格が悪いに決まっている。
そんな奴の思考を読み解ける奴なんて――いた。
「教えてくれ。 お前があの敵機の位置を常にモニターするならどこに陣取る?」
「え!? い、いきなり何?」
即座に通信を繋ぐ、相手はグロウモスだ。
いきなり話しかけられてビクリと驚いたようだが、質問の内容自体は理解したようで少し間が空く。
ウインドウにマップが表示され、いくつかの場所にピンが打たれた。
「た、多分、この辺。 環境的に下手に遮蔽物に隠れるよりは地形に溶け込む方が見つかり難いし」
グロウモスが指定したのはクレバス――要は地割れの近くが多い。
いざとなったら身を隠す事も視野に入れた位置取りだ。
「サンキュー! 助かったゾ! コソコソするのは得意技だナ!」
「あ?」
グロウモスが聞いた事もない声を上げたがポンポンは通信を切断。
戦場から一番近くのクレバスへと移動してスキャニング。
指定された中で一番、近かったからだったのだが――反応があった。
本当に目を凝らさなければ、それこそ居ると分かっていないと分からないレベルの熱源があったのだ。
「見つけたゾ!」
敵機の位置を味方に共有と同時にポンポンと彼女が連れて来た「豹変」メンバーが一斉射撃。
それに紛れるようにニャーコが突っ込んで行った。
次々と着弾し、爆発が発生。 爆炎に紛れるように一機のトルーパーが飛び出す。
分かり易い機体だった。 背面と頭部に巨大なレドーム。
頭に被っている事もあって三度笠のようだ。 脚部の形状からホバー移動の推進装置。
恐らくは空中戦は不得手で地上戦――正確には電子戦に特化した機体だろう。
背面にライフルのような物がマウントされているが、抜いている様子はない。
回避を読んだニャーコが既に先回りしている。
「ニャーコ! 敵側のジェネシスフレームだ。 油断はするナ!」
「分かってるにゃ!」
敵機は加速。 そのまま逃げを打つ。
誘い込まれている? 動きから明らかに戦場から離れようとしている。
この時点でポンポンは敵機の戦闘力を図りかねていた。
明らかに戦闘ではなく支援特化の機体だが、Sランク相当のオペレーターの実力を見ていると発見したからと簡単に仕留められるかが怪しかったからだ。
機動性では飛べる分、ニャーコの方が上。 即座に追いつき、その背に向けてストレートを打ち込む。
――が、ニャーコの拳は空を切った。
いや、明らかに当たってはいたのだが、攻撃がすり抜けたのだ。
分身? 違う。 恐らくは何らかの情報欺瞞。
その証拠に敵機の反応が増えていたからだ。 ニャーコを囲むように三つ。
「ウイルスチェック!」
言いながらポンポン自身もチェック用のプログラムを走らせると感染を確認、ウイルスの駆除を開始というメッセージがポップアップした。
誤字報告いつもありがとうございます。
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