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「――チッ、こいつが噂のオペレーターって奴か!?」
「前のイベントでアドルファスとカカラをやった奴らしいな! 一人で来るとはいい度胸だ!」
ユウヤが散弾砲を撃ち込み、ケイロンが加速しながら重機関銃を連射して挟みに行く。
十字砲火を空間転移で回避。 転移先にベリアルが先回りしてエーテルブレードで斬りかかる。
両腕をブレード化してラッシュをかけるが、打ち合うだけでブレードが欠け、数度で砕け散った。
「ぬぅ、我が闇の刃では強度に劣るか!?」
ベリアルが後退し、入れ替わるようにふわわが一気に踏み込むと神速の居合で一閃。
敵機は僅かに仰け反って紙一重の回避。
「いい眼してるなぁ」
体勢が崩れた所でニャーコが背後から大砲のようなストレート。
それに加えてエーテルによって分身した拳が襲い掛かるが、上半身を振るだけで躱す。
「胴体いただき!」
懐に入ったシニフィエが膝をコンパクトに畳んでコックピットを狙いに行ったが突き出すような蹴りを先に出されて膝が止められる。
足と膝が接触した所でギミックを開放。
膝からパイルが飛び出すが、突き出した頃には空間転移で背後。
短剣が振るわれる前にユウヤの電磁鞭が振り下ろされた事でそちらの迎撃を優先。
電磁鞭が斬り飛ばされる。 敵機は即座に移動。
一瞬後にはケイロンの放った無数の銃弾が何もない空間を通り過ぎる。
回避先にタヂカラオのエネルギーリングが無数に撃ち込まれるが、敵機は軽い動作でリングを切断して無力化。
「この人数で攻めきれないのか!?」
タヂカラオが勘弁してくれと言わんばかりに追撃。
ヨシナリとしても全くの同感だったが、空から降って来るミサイルの数は千を軽く超えている上、次々と追加が降って来る。
これだけ派手にやれば発射地点の割り出しは可能なのだが、ふざけた事に周辺の基地からだ。
どうやら初手でこちらの位置を捕捉して速攻をかけに来たらしい。
事前情報と違いすぎる点からあの敵機が何かしている可能性が高い。
――いや、前の時はこんな絡め手は使ってこなかった。
動きからあの敵機の中身の人物像と噛み合わない。 つまりは――
「ヨシナリ! 多分だけどもう一人居るゾ!」
先回りするようにポンポンが結論を口にする。
「俺もそう思います。 恐らくはエネミーの操作か何かに特化した指揮官機でしょうね」
無限湧きするエネミーに対しての指揮権を獲得する機能を備えた機体?
本当にそうならこのシチュエーションではクソ過ぎる能力だ。 真偽は遠からず明らかになるだろう。
何故なら次にやる事が簡単に想像できるからだ。
レーダーに無数の反応があるが、確認するまでもない。
目視でも何かが近づいて来るのが分かるからだ。
「ほら来たぁ!」
思わず叫ぶ。
「ヨシナリ! 北からエネミーの群れ! とんでもねぇ数だ! 千五百は居る!」
通信は基地への対処を行うメンバーの為に先行したツガルからだ。
元々、部隊を二分割して近い南北にある拠点に仕掛けるつもりだった。
その為、北と南に分けて後退させたのだが、目的地から無数のエネミーが出撃したらしい。
「こ、こっちもエネミー群。 数は千から千三百」
南に向かったグロウモスからもほぼ同じ報告が来た。
「それなりに時間をかけてブリーフィング用の資料を用意したこっちの身にもなってくれないかなぁ! ふざけないでくれませんかねぇ!!」
前回、結果的に余り参考にならない情報を提供した事になったタヂカラオは今回こそはと力を入れてリサーチしたにも関わらずこれなのだ。 文句の一つも出るだろう。
叫び声が微かに震えていた。 ヨシナリは内心で気の毒にと思いながらも打開策を練る。
戦況は最悪だった。 北と南からエネミー群、どちらも千から千五百。
馬鹿正直に相手をせずに突破に絞ればどうにでもなるが、こちらが後退の為に部隊を割った所を狙われた。 加えて上空からはミサイルの雨。
高火力のメンバー達が迎撃しているが、いつまでもは保たない。
そして極めつけはあの敵機――オペレーターの存在だ。 こちらの主戦力の大部分を持っていかれた。
どれか一つ、あるいは二つならどうにでもなったが、三つ同時は流石にこちらの処理が飽和気味だ。
こういった時の心構えは前の時から準備して来た。
頭が真っ白になって雑な指示を出す事はあってはならない。
ポンポンやタヂカラオも手を動かしながら状況の打開策を必死に探しているはずだ。
重要なのは考えを可能な限り単純化し、処理の優先順位を決める事にある。
この場合どれを優先するべきか? ミサイル? エネミー? オペレーター?
どれも簡単ではない上、分かり易い処理方法が出てこない。
――本当に?
オペレーターは目の前にいる以上、直接戦闘で仕留めるしかない。
あの強さは並ではない事もあって簡単ではない上、どうやっても時間がかかる。
恐らく三つのタスクの中で最も難易度が高い。
つまり優先順位は最低だ。 前衛のメンバーに頑張ってもらうしかない。
残りはミサイルとエネミーだ。 この問題は実の所、根は同じではないのだろうか?
ミサイルが飛んできているのは周辺の基地。 エネミーが出現しているのも周辺の基地。
この流れに指向性を持たせている奴が居るのだ。
つまりもう一人のオペレーターかそれに類する存在が裏で操っている。
「ポンポンさん! 何人か連れてエネミーとミサイル攻撃を主導している奴を探し出して貰えませんか!?」
「だナ。 行くならシックスセンス持ちじゃないと捕捉できない。 つまりあたしかヨシナリのどっちかか」
ポンポンは少し悩む素振りを見せたが分かったと応えた。
恐らくオペレーターと交戦中のメンバーに対しての指示出しはヨシナリの方が向いていると判断した結果だろう。
「恐らくはあいつ程は強くないはずです。 仮に戦えたとしてもここに顔を見せていない以上、指揮に専念しなければならないと見て間違いないかと」
「つまり、仕掛けるだけで指揮に専念できなくなる可能性が高いって事だナ」
「その通りです」
援護射撃の一つもしてこない点から、可能性として高い。
結論として、この状況を操っている者は戦闘能力が低いか、戦闘と指揮を並行して行えない、だ。
複数の可能性もあるが、ここまで完璧に気配を消している点から単独の可能性は高い。
「分かった。 まんまるは残すがニャーコは連れて行くゾ!」
「人選はお任せします。 簡単な相手ではないと思うので気をつけてください」
ポンポンは小さく頷くとニャーコと連れて来た「豹変」のメンバーを連れてその場から離れて行った。
誤字報告いつもありがとうございます。
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