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気が付けばヨシナリはユニオンホームへと戻っていた。
何が起こったのかよく分かっていなかったが、負けたという事だけは理解できた。
「お疲れ! 悪いな、あっさりやられちまって」
マルメルが労うように声をかけて来た事もあって負けた事によって叫び出したくなるような悔しさをぐっと呑み込む。
「……ふぅ、はは、すいません。 やられてしまいました」
ぐるりと周りを見回すと、マルメルはいつも通り、ふわわは無言だが拳を強く握っている事から悔しさが滲み出ている。 グロウモスは普段通り、ホーコートは何かを考えるような様子。
ユウヤは無言でソファーに座っており、膝の上にはアルフレッドが居る。
ベリアルは壁にもたれかかっているが僅かに俯いている点から落ち込んでいるのは明らかだ。
シニフィエは普段通り、アイロニー、ケイロンは何とも言えないといった様子だった。
「さて、恒例の感想戦やりますか!」
負けたのでお通夜のような重い空気だが、ヨシナリは努めて明るくそういった。
「だな。 サクッと始めちまおうぜ!」
「そうやねぇ。 ウチも見返しときたいわ」
乗っかる二人に内心で感謝しながらウインドウを可視化。
リプレイ映像の再生を始める。 まずは敵の構成を確認からだ。
「タカミムスビは当然としてカタトゥンボ、霧ヶ峰、サニー、凍露、篠突、キュムラス、フェーン、雪華――最後にニニギ。 概ね予想通りのメンバーでしたね」
「思金神」の一軍はタカミムスビを含めても10人以上いるので、完璧に当てるのは難しかったが、構成的に来る可能性が高いメンバーは予想できた。
特に好戦的なカタトゥンボ、サニー、参謀役の霧ヶ峰、支援機の篠突、キュムラス、フェーンは高い確率で来るとベリアル達が断言した事により事前に戦い方を組み立てられたのはありがたかった。
開始と同時にタカミムスビによる斉射が開始される。
「あの距離で届くの反則だろ」
「まぁ、流石にまともに届くのは光学兵器とミサイルだけどな。 実体弾はばら撒いてるだけの牽制に近い」
マップの両端が初期配置にも関わらずに届くのはマルメルの言う通り反則だ。
並のチームならこれだけで終わってしまうだろう。
パンツァータイプなんて編成しようものなら開始早々に喰われて終わる。
ただ、それは不意打ちであるからこそ効果を発揮するのであって、来るのが分かってさえいれば対処はそこまで難しくはない。 この距離であるならミサイルは充分に迎撃可能。
問題は光学兵器だが、距離の所為で減衰している事もあって光学兵器を減衰させるスモークと自前の防御機構――エネルギーフィード等で充分に対処は可能だ。
それに読めているだけあってそれを逆手に取る方法も考えていた。
スモークによってセンサー系を一時的に誤魔化す効果もあってこれからヨシナリ達がする事は相手には観測できない。
「初めて見たけどコレ凄いなぁ。 エーテルを使ってくっ付けてるんやんな?」
「そうですよ。 二機分のジェネレーター出力とエーテルを使って性能を爆発的に高める事が出来ます」
ついでに転移範囲も拡大するので充分に相手の意表を突ける。
特に『思金神』の一軍ともなればランク戦でベリアルと当たった回数はかなりの物だろう。
それ故に手の内を知っている彼等は見誤るのだ。 転移の範囲と初動を。
転移で掻い潜る事は相手も想定しているはずだ。
最初は想定範囲内の動きをした後、ベリアル単独ではできない距離を転移しての肉薄。
真っ先にカタトゥンボを仕留める事は決めていた。
理由としては高い確率で前に出る事――要は仕留め易い位置にいるというのが最も大きい。
加えて、近接寄りの中距離機体で特殊武装によりこちらの継戦能力を削って来る事もあって生かしておくと後々に響くのでここで処理しておきたい相手だった。
カタトゥンボの対処も決して悪いものではない。
ベリアルの転移距離を読んで、消えたと同時に出現位置を読んで仕掛けに行くのは豊富な戦闘経験からくる勝負勘に基づいた物だろう。
――が、流石に合体機は想定外だったようだ。
彼はヨシナリ達の転移範囲を大きく見誤り、至近距離までの肉薄を許した。
姿が違う事も反応が遅れる要因の一つだろう。
結果、ベリアルが操るエーテルの腕による斬撃を無防備に受けることになり細切れになった。
「これ、マジですげぇな」
「ふ、この俺と闇の王との饗宴をそう容易く見切れるものではない。 ――だろ?」
そう言ってヨシナリはクネッとポージング。
元気を出せと態度で伝えるとベリアルは小さく笑ってみせる。
「そうだな。 闇と闇が重なりし時、真なる深淵が姿を現す。 それに触れた者は等しく無に帰すという訳だ」
応じるようにベリアルもクネッとポージングで返す。
「タクティカル。 非常に興味深いな。 互換性のあるエーテルリアクターを使っているが故のシンクロ。 いや、これは二人の連携のなせる業か」
「いや、皆さん普通に受け入れてますけど、このゲームに合体の概念がある事に対してはなんの突っ込みもないんですね……」
アイロニーはうんうんと頷きながら興味深いと呟き、シニフィエはやや引き気味だ。
そんなやり取りを尻目に映像は進む。 次に仕掛けに行ったのはサニー。
フランスのSランク、グリゼルダと同じで転移を用いて変幻自在の攻撃を仕掛けてくるという厄介な相手で、機動性も高く脅威度の高い相手だ。
前に居たのはカタトゥンボを援護する為だろう。
リング状のドローンを操り、それが入口と出口を担う事で味方を巻き込まずに援護を可能とする。
単騎でも充分に機能する強力なプレイヤーではあるが、その真価は他者に合わせる事が上手い点だ。
個人主義の多いAランクプレイヤーの中ではかなり珍しい。
アイロニー曰く、大規模戦では味方の援護でかなり高く評価されているとかいないとか。
ただ、弱点が割と明確で、リングによる攻撃の出し入れが最大の強みである以上、使う前に速攻をかけられれば比較的ではあるが、簡単に処理できる。
特にカタトゥンボを瞬殺した事による動揺がある状態なら猶更だ。
それでも立て直してカバーに入ろうとする霧ヶ峰は流石だった。
サニーもリングを飛ばしてヨシナリ達を囲むように布陣させるが、それも想定内。
ヨシナリは敵チームのメンバーを非常に高く評価していた。
それ故に対処される事を念頭に置いていたのだ。
誤字報告いつもありがとうございます。
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