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Intrusion Countermeasure:protective wall  作者: kawa.kei


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 こちらですと通された広い部屋には横長のデスクと席には美しい女性(・・)

 黒髪、黒瞳、長い髪を一纏めにしているその姿は人間とそう変わらないが、アレはプレイヤーアバターだ。

 普通ならマネキンのような見た目をしているのだが、目の前の彼女は高い金をつぎ込んでカスタマイズしたらしい。 アバターのカスタマイズは機体を新調するほどではないがそれなり以上に高額だ。


 顔だけでもパーツ単位で弄る必要がある上、いちいち金がかかる。

 人間に近い見た目にするのなら要求される額は相当だ。 これが上位プレイヤーの余裕って奴かとヨシナリは考え、促されるままソファーに腰を下ろす。


 「急な呼び出しだったのに来てくれてありがとう。 私はカナタ。 このユニオン『栄光』のリーダーをやってます」

 「どうも、ヨシナリです。 星座盤のリーダーやってます」


 その後、マルメル、ふわわと簡単な挨拶を済ませるとそのまま本題へと入った。

 ユニオン『栄光』。 元々カナタは人望も厚く、かなりの人数のプレイヤーと友好関係を結んでいた。

 システムのアップデートでユニオン機能が追加されれば人数が集まるのはある意味必然だったのかもしれない。 栄光は既に組織としての体裁を整えつつあり、トップであるカナタを中心に幹部クラスの上位プレイヤーが脇を固めるといった形にする事に成功していた。


 それを聞いてヨシナリは素直に凄いとは思ったが、同時に面倒くさそうとも思っていた。

 ユニオン『栄光』ランクⅢ。 構成人数は九百五十五人。

 組織化しているという事はこれだけの人数を管理している事になる。 その労力を想像しただけでヨシナリは気が重くなりそうだったが、カナタは納得してやっているのだろうか?


 ――こういうのって神輿にされる場合が――


 そこまで考えて俺には関係ないかと思考を投げ捨てた。

 

 「さて、早速なんだけど、栄光は次回の復刻イベントで勝ちに行こうと思っててね。 それに伴ってプレイヤー間での連携訓練に力を入れているんだよ」

 

 流石にまったく同じイベントを何度もやらされる事にうんざりしているプレイヤーは多く、あちこちでイベント突破の為に様々な行動を起こしているようだ。

 今回、呼び出された理由は同ランク帯の相手が少ないのでメンバーの模擬戦の相手をして欲しいとの事。 その過程でここの空気が合うなら参加しないかといった勧誘も兼ねている。


 「話は分かりました。 ユニオンには入りませんけど、模擬戦の相手は喜んでしますよ」


 一瞬、謝礼ってどれぐらい貰えるんですかと聞きかけたが、それはないなと思って聞くのを止めた。

 

 「ありがとう、助かるよ。 では早速、始めよっか。 試合形式は三対三のチーム戦で相手を全滅させれば勝ちだから」

 「了解です。 では、こっちも準備に入ります」


  

 カナタという女性はせっかちなのか、それとも他に何かあるのか、今一つ読み切れない相手だった。

 ヨシナリとしてはそこは割とどうでも良く、話が通じそうな相手だったなといった印象を受けた。


 「アバター凄かったな。 普通に美人じゃん」

 「な~に~。 マルメル君、あんな感じなのが好みなの~?」

 「そういう弄り勘弁してくださいよ。 でも、マジな話、あれだけ造形整えるのって相当かかると思うんだよなぁ……」

 「俺もそう思う。 流石にフレーム買えるレベルじゃないだろうが、その辺の武器やパーツ一式は揃えられそうな額はつぎ込んでると思う」

 「よくやるぜ。 あれやるぐらいなら俺だったら新しい突撃銃買うわ」

 

 その点はヨシナリも同意だった。 街を歩き回ったり他と話す時にしか使わないアバターにそこまで金をつぎ込むのは正直な話、理解に苦しむ。

 

 「分かってないなぁ君たちは」


 ふわわがふんふんと鼻を鳴らしてそんな事を言い出した。

 それを見て、ヨシナリは内心で首を傾げマルメルはなんかあるんですかと聞き返す。

 ふわわはよくぞ聞いてくれましたと胸を張る。


 「確かにアバターのデザインを弄る事はあまり意味がないと思うよ! このゲームって基本的にロボで戦う事だからね。 そんな事は皆、分かっていると思うよ? それでも弄るのは何でだろうね?」

 「何か理由があるって事ですか?」

 「その通り! ヨシナリ君はどう思う?」

 「…………まぁ、ユニオンのトップって目立つ事をしなければならないので人前に出る為のデザインって感じですかね?」


 流石にあれだけの人数が居るユニオンで他と見た目が同じな個性ゼロなビジュアルは不味いと判断したのかもしれない。 

 マルメルはあぁなるほどと納得していたが、ふわわは分かってないな~とヨシナリの肩を叩く。 

 それに若干イラっとしたが、割と重要な事かもしれないと我慢して先を促す。


 「ウチの見立てでは見せたい相手がいる! つまりカナタって子はこのゲームに意中の相手が居て、その人に自身の存在をアピールする為に高いお金をつぎ込んであんな姿にしている! ズバリ、恋よ!!」


 ――――は??

 

 二人は思わず顔を見合わせる。

 ヨシナリは内心で何を言ってるんだこいつはと思ったが、首を捻るだけにしておいた。


 「何を言ってるんスか? このゲームでそんな展開あります??」

 「自分のアバターを見てくださいよ。 こんなのっぺらぼう同士でそんな色っぽい展開になる訳ないでしょ」

 「何よー! 絶対、合ってるって! あの子は気のある男子にアピールしてるんだってば!」

 「あぁ、はいはい。 そろそろ相手の準備が出来そうなんで俺達も行きますよ」


 ふわわの妄言を切り捨てたヨシナリはウインドウを操作して戦場へ移動。

 場所は旧市街地。 以前にレラナイトと戦ったのと同じフィールドだ。

 ありがたい。 ここなら地形情報が頭に入っているのでやり易いからだ。


 僅かに遅れて僚機であるマルメル、ふわわの機体が出現。

 

 「前の戦いを見られている可能性は高いから、読まれてると感じたらパターンBに切り替えて行こう」

 「了解。 要はふわわさんの奇襲が通らなかったら地下に潜るって話だろ?」

 「オッケー。 取り合えず、上位ユニオンさんのお手並み拝見だね!」


 ヨシナリは達が配置に付いたと同時に相手がフィールドに入った事を示すメッセージが入った。


 『よし、双方準備ができたみたいだね。 ならささっと始めちゃって』


 審判役でカナタの通信が入ったと同時にスタートまでのカウントが始まる。

 五秒前、三、二、一、ゼロ。 


 ――戦闘開始。

誤字報告いつもありがとうございます。


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