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Intrusion Countermeasure:protective wall  作者: kawa.kei


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 「――そろそろ勝負を決めに行く感じですね」


 シニフィエが雰囲気の変化を敏感に感じ取ったのかそう呟く。

 その通りだった。 お互いに相手に対しての分析が終わったのでそろそろ決着を着けに行こうと仕掛けに動きだす。 


 ヨシナリはこの時点でタヂカラオの技量と機体特性に関しての分析を終えている。

 同時に一人で勝つ事が出来ない事も悟っていた。 


 「スペック的に戦えるレベルまでに持っていけていると思ってたけど、やっぱり下位のフレームじゃ厳しいな」


 タヂカラオと彼が操る機体『トガクシ』。

 武装は両手両足に備わっている合計十二のリング。 推進装置も兼ねているので全てを攻撃に使用できないので十二のリングを攻撃、防御、機動性の三つに割り振り、戦況に応じてバランスを変えるのがあの機体の特性だ。 こうして俯瞰してみると面白い機体と言える。


 だが、裏を返すとリングに依存しているので破壊されてしまうと性能が大きく落ちるのだ。

 この時点で攻略の糸口は見えていた。 タヂカラオがエネルギーリングをばら撒き、ヨシナリはアトルムとクルックスを連射してエネルギーリングを欠けさせる。 


 同時に変形して加速し、欠けたリングを潜って真っすぐに突っ込む。


 「あれ? リング潜ってるぞ?」

 「実はあのリングって一部が欠けると重力場が維持できなくなるから通れるようになるんだ」


 懐に飛び込み、接近した所で変形。 アトルムとクルックスを構えるがタヂカラオが腕のリングを利用してエネルギーランスを形成し刺突を繰り出す。

 

 「んー? あの機体、腕の輪っか減ってへん?」

 「あ? 気づきました? 左右の腕に付いてる奴が一個ずつなくなってますよ」

 「じゃあ輪っかどこ行ったんだよ?」

 

 マルメルの質問にヨシナリはカメラを引きにする事で応えた。

 よく見たらリングが単独で浮いており、ヨシナリの死角にいる。


 「うわ、あの輪っか遠隔操作できるのか。 ――ってか飛べるのかよ」

 「推進装置も兼ねているから飛べる事自体はそこまで不思議じゃない。 で、武装も兼ねているから攻撃ドローンとして使用できる事もあり得るって訳だ」

 「このタイミングだと躱すの難しくありません?」


 シニフィエの言う通りだった。 だからヨシナリは自力で躱す事を諦め、他を頼る事にしたのだ。

 リングが発光。 ヨシナリは振り返りもしない。 

 恐らくタヂカラオはこの時点で勝利を確信していただろう。 だが、彼の思惑はここで大きく狂った。


 何故なら二基のリングが撃ち抜かれてたからだ。 

 狙撃。 誰の仕業かは考えるまでもない。 全員の視線がグロウモスへと向かう。


 「助かりましたよ。 グロウモスさんが居なかったら負けてたんで、タヂカラオ撃破の最大の功労者ですね!」

 「そ、そうかな? や、役に立った? 立った?」

 「勿論。 そもそもグロウモスさんの腕を信じてたからこそあそこでリングを無視できました」

 「ふ、フヒ。 よ、ヨシナリはわ、私を信頼してるって事だよね? プフ、プヒ、ウヒヒヒヒ」


 ヨシナリはグロウモスの不気味な笑い声に頷きで応えつつアバターの下で顔を引き攣らせた。

 本当に表情のないアバターで良かったと思いながら映像に意識を戻す。

 リングによる奇襲が破られた事で動揺していたが、流石はランカーだけあって立て直しは即座だ。


 ヨシナリの蹴りに合わせて迎え撃つように蹴りを放つ。 両者の足が交差。

 

 「確かホロスコープの足って――」


 マルメルが呟いたと同時に両者の足が接触した辺りで爆発。

 足に仕込まれたクレイモアが起爆したのだ。 それによりタヂカラオの足が砕け散った。

 リングを四分の一失った事で機動性が落ちる。 それでも諦めずに反撃に移ろうとしたが、グロウモスによる狙撃と下を片付けたマルメルの銃撃が飛んで来たので回避。


 タヂカラオは不利を悟っているが諦める気はないのか戦意は衰えていない。

 ヨシナリはまともに戦う気はなく、武器をアシンメトリーに切り替えながら高度を落とす。

 誘い込まれていると判断はしているが、乗る以外の選択しなかった。 何故なら狙撃の使えるグロウモスがフリーな以上、高度を取った所で意味がない。 射程では彼女の方が上なので下手に上に逃げるのは悪手だからだ。


 結局、彼に残されたのは虎口であると理解していながらも飛び込み、各個撃破する必要がある。 

 

 ――が、いくら性能差があろうとも五対一の不利を覆す事は不可能だった。


 ヨシナリ、グロウモス、マルメルの銃撃を掻い潜っていたが、その間隙を縫って肉薄したシニフィエが組み付いて腕を破壊。 逆上してシニフィエを狙おうとしたが、それが大きな隙となった。

 ヨシナリの放ったエネルギー弾がコックピット部分を捉え、次の瞬間にふわわの一閃がその機体を両断。 機体が爆発した事で試合終了となった。


 改めて振り返って見ると危なげなく勝利したと言える。 

 敵の全滅に対してこちらの損耗はホーコートのみ。 そのホーコートもふわわが敵機を仕留めるまでの足止めを行ったので上出来と言える。 そもそもランク差があるので初めから勝てるとは思っていなかった。 シニフィエに関しては規格外なのであのレベルを求めるのは酷な話だろう。


 こうして見ると『星座盤』のチームとしての総合力が大きく上がっている事を感じる。

 特に集団戦での成長が顕著なのはグロウモスだろう。 チーム戦での立ち回りが目に見えて上手くなっている。

 敵機の足止めからのシニフィエ、ヨシナリの動きに連動しての援護。 


 彼女が居なければ結果が変わっていたかもしれないレベルでの貢献と言えるだろう。

 他のメンバーもかなり良くなっている。 マルメルは安定感が増し、やや強引ではあったが格上相手に勝利をもぎ取ったのは彼の成長の証と言えるだろう。


 ふわわ、シニフィエはもう規格外過ぎて何も言う事がない。

 シニフィエはランクから考えると相当な実力者だ。 近接スキルはふわわと同格と見ていい。

 あのクラスの前衛が二枚いるのは今後を考えると頼もしい戦力だ。

 

 ホーコートは例のチートに頼らない戦い方を確立させる必要があるが、やる気はあるので気長に育てていけばいい。 今のチームの戦力を確認できた事だけを切り取っても大きな収穫だった。


 ――それに――


 ポコンと通知音がしてメールを確認するとタヂカラオからで、賭けの報酬が添付されていた。

誤字報告いつもありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
ヨシナリの一番は君だよ(幻聴) 人数が少ない以外はほとんど隙がない恐ろしい陣容だな
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