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Intrusion Countermeasure:protective wall  作者: kawa.kei


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 正直、そんなふわっとした質問をされても答え辛かった。

 それにヨシナリの質問は少しだけ痛い所を突かれている面もあったからだ。

 彼女はその戦闘スタイル故に初見の相手には非常に強いが、二回目以降だと対策されるので勝率がガクリと落ちるのだ。 戦績は確認できるので見てみると初見の相手への勝率は七割近いが、同じ相手だと四割以下まで下がる。


 特に今のランクに上がってからはそれが顕著で、一度当たった相手は確実にグロウモスが嫌がる事をしてくるようになってきた。 加えて、センサー類の強化も進んでいるプレイヤーも多く、捕捉もされやすくなっている事も伸び悩む一因だろう。 当然ながらそんな事は彼女自身が一番理解していた。


 だから――


 「なら、模擬戦で確認してみる?」

 

 ――気が付けば少しだけむっとした声でそんな事を言っていた。


 「いいですね。 是非やりましょう」


 そんなグロウモスの気持ちに気付いているのかいないのか、ヨシナリは即答。 

 グロウモスはその反応の早さに僅かにたじろいでしまうが、思い直して頷く。

 お互いはフィールドを移動。 いつもの市街地ステージだ。


 グロウモスは自分の機体を確認。 中折れ式の特殊銃に小口径、大口径の狙撃銃が各一丁。

 今回はヨシナリのホロスコープが相手なので弾速の速いエネルギーガンを一丁持ち込んでいた。

 ふぅと小さく息を吐いて気持ちを切り替える。 今の彼女は冷徹な狩人、彼我の戦力を見極めべく思考を回す。


 ヨシナリ。 このユニオン『星座盤』のリーダー。

 リーダーシップがあるのかは微妙ではあるが、ユニオン運営に関してはマルメルやふわわの雰囲気を見れば上手くやれている事が分かる。 ならばプレイヤーとしてはどうか?

 

 間違いなく強い。 少なくとも自分よりは上を行っている。

 ヨシナリの恐ろしい点は個々の技術を切り出して評価すれば並以上ぐらいなのだ。

 近接はふわわには遠く及ばず、中距離での立ち回りはマルメルの方が上だろう。


 そして狙撃の腕は自分の方が上――にもかかわらず勝てないのは総合力の高さにある。

 確かに個々の技能はスペシャリストには敵わないだろう。 何故なら彼は特定の分野に特化したスペシャリストではなく、幅広い状況に対応できるゼネラリストだからだ。


 相手に合わせた最適な戦い方を瞬時に模索し、それを実行に移す。

 それはプレイヤー『ヨシナリ』の戦い方。 突き抜けた物がない代わりに穴もない。

 グロウモスのヨシナリに対する認識はそれだった。 そんな相手にどう戦えばいいのか?

 

 ――残念ながら明確な解はでなかったが、どう動けばいいのかだけは理解していた。


 「……結局の所、自分を貫く事だけが勝利への近道」


 そう呟くと同時に試合開始。 グロウモスは真っ先に動く。

 レーダーや動体、熱源検知には引っかからないが、シックスセンス装備のヨシナリには通用しない。

 あのセンサーシステムの探知手段は無数にあるので、どれかに引っかかった時点で居場所が割れるので隠れるのは無意味だ。 そういった意味でもヨシナリはグロウモスの天敵ともいえる。


 だが、上に行く為、強くなる為には相手を選り好みなんてしていられない。

 ステルスが剥がされるなら純粋なテクニックで攪乱してやる。

 まずは上からの攻撃をやり辛くする為にビルの密集地に飛び込む。 上から来る関係で射線を完全に切る事は難しいが、狙い辛くする事は可能だ。


 機動力は向こうが圧倒的に上だが、狙撃の精度にはグロウモスに分がある。 

 同時に捕捉した場合、構えてから撃つまでの時間が短いのは自分。 

 理想は正面からの撃ち合い一発勝負に持っていければ勝てる。


 その為に大口径の狙撃銃を持ってきたのだ。 

 空を見上げると戦闘機形態のキマイラタイプが突っ込んで来る。

 どうせ居場所は割れているので、グロウモスは即座に狙撃銃を構えて発射。

  

 エネルギーの流動で発射のタイミングを取って来るので比較的、読まれ難い実弾銃だ。

 ズンと重たい銃声が響き、ヨシナリを射抜かんとライフル弾が真っすぐに飛んでいくが、ヨシナリは最低限の挙動――具体的には機体を僅かに傾けるだけで回避。


 完全に軌道が見切られている。 だったらと小口径の狙撃銃に持ち替えて三連射。 

 口径が小さい代わりに連射が利く。 こちらは横に転がるような一回転で回避。

 無理だと判断して近くのビルの陰へと入る。 僅かに遅れてエネルギー弾がグロウモスの居た場所を直撃。 即座に撃ち返そうとビルの陰から飛び出したが、空にヨシナリの姿はなかった。


 何処に――次の瞬間、銃声が響いて足、脇腹、頭部に被弾。

 他二発はそうでもなかったが、脇腹が致命的でジェネレーターを撃ち抜かれた。

 そのまま爆散。 試合終了となった。


 ホームに戻った後、いつもの感想戦だ。 

 何が起こったのかと見直すと非常に単純な事だった。 

 ヨシナリはトップスピードの状態で突っ込んで来ており、グロウモスの狙撃を最小の動きで回避。


 反撃を警戒して物陰に入ったと同時に撃ち返し、そのまま急降下。

 ビルの隙間を縫うように飛んでそのままグロウモスの背後に回り込んだのだ。

 そしてグロウモスが飛び出したと同時に真後ろに出て、拳銃で三連射。 特に秀逸だったのはビルの隙間から飛び出したと同時に変形し、倒れ込むような姿勢で拳銃を構えて連射した事だ。

 

 ヨシナリが道路を挟んで反対側のビルの隙間に入ったと同時にグロウモスの機体が爆散。

 試合終了となった。 悔しいという思いがあったが、それ以上にあの体勢とスピードで当ててくる事が凄まじいと感じてしまい心境は複雑だ。


 「今の……」

 「動きを止めている相手なら割と正確に当たるようになってきたか――はい?何ですか?」

 

 隣で映像を見て自分の動きを自己採点しているヨシナリはやや遅れてグロウモスの声に気が付いた。

 

 「あの動き、どうやったの?」


 センスだけでは説明がつかない。 

 どうやったらあんなアクション映画みたいな真似ができるのかグロウモスには分からなかった。

 

 「えーと? 最後の奴ですか? キマイラに乗り換えてからずっと練習してる動きですね。 拳銃を構えて倒れ込みながら射撃。 映画みたいで格好いいでしょ? ――と、冗談はここまでにして、基本的にキマイラは足に推力偏向ノズル、要はブースターが付いているんで人型形態の時でも倒れ込んだ状態の方が割とスピードが出しやすいんですよ」

 

誤字報告いつもありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 突かれて、突っ掛かり返して試合して 試合のあとの感想戦でキザなことを言うカレ() ちゃんとアオハルしてるぞ、よかったね! [一言] 三割ちょっとは初見で、残りの半分も二回目には対応してくる…
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