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Intrusion Countermeasure:protective wall  作者: kawa.kei


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 相手の移動に合わせて位置を変える。 一方的に相手の位置を掴んでいるが故のアドバンテージ。

 近接主体の装備で機動力にも大きな開きはない。 ポジショニングをミスらなければこのまま完封できる。


 ――なんて考えているんだろうなぁ。


 セオリー通りのやり方で仕留められるなら苦労はしない。

 不意にふわわの機体が移動経路を変える。 嫌なタイミングだった。

 グロウモスが隠れてすれ違おうとした瞬間を狙った動きの変調。


 流石にグロウモスはこの展開を予想できなかったのか僅かに動きが乱れる。

 だが、流石はEランクプレイヤー。 リカバリーも早い。

 屋上へ登っての移動を諦め、ビルの間を縫うようにアンカーを撃ち込んで飛び移る。

 

 推進装置を使っていないのにとんでもない速さだ。 


 ――が、推進装置には及ばない。


 ふわわは徐々に距離を詰める。 グロウモスは慌てているだろうなとヨシナリは同情した。

 ステルスしているはずなのにぴったりと張り付いてきているのだ。

 グロウモスは追い付かれると判断してやや強引に撒こうと決めたらしい。 


 「ってかここまで詰められてもブースター使わないんだな」

 

 マルメルが思わず呟くがヨシナリも少し気になった。

 ここまで頑なに使わないというよりはもしかして使えないのか?

 例のセンサー避けの布の所為で機体の全容が見えないので正確な所は不明だが、グロウモスの機体にはブースターが搭載されていないのかもしれない。

 

 だとしたらあの軽快な動きにも説明が付く上、移動をワイヤーアクションに頼っている理由も納得だ。 ヨシナリはふーむとグロウモスを観察、試合に関してはもう終わると思っていたので戦況に関しては論じるまでもなかった。  


 ――何故ならふわわはビル越しに抜刀の態勢を取っていたからだ。


 「うわ、マジかよ」


 意図に気が付いたマルメルは思わず声を漏らす。

 ヨシナリも同じ気持ちだったので、そっと目を伏せる。 グロウモスはビルを回ってすれ違う形で振り切ろうとしたみたいだが、ふわわにそれは通用しない。


 野太刀がバチバチと紫電を放ちながら解放の時を待っている。 

 グロウモスがそのまま抜けようとした瞬間、ふわわは地面を砕く勢いで一歩踏み込み一閃。

 液体金属の刃は瞬時にビルごとグロウモスの機体を両断した。


 そして僅かに遅れて爆散。 試合終了となった。

 


 「ふいー、捕まえるの大変やったわー」


 戻って来たふわわは上機嫌でそんな事を言っていたが、グロウモスはランク上は格下に二連敗した事がショックだったのか崩れ落ちていた。

 ヨシナリがそっと近づくと――


 「何よあれ?レーダーに映らないのにどうやって見つけたの?まさかチート?チートでしょ?クソ絶対に許さないあれさえなければ私は負けてなかった私は負けてない負けてない負けてない」


 呪詛を振りまく彼女の姿からそっと目を逸らして距離を取った。

 そっとしておこう。 ヨシナリは彼女が正気に戻るまでの間、ふわわの方へと近づく。


 「凄いっすね。 ってかどうやって居場所を割ったんすか?」 


 マルメルが感心したように色々と聞いているところだった。


 「別に完全に分かってた訳やないけどなんとなーくあの辺やろうなーって感じがしたから行った感じかな?」

 「マジっすか」

 「マジマジ、まぁ、何も考えてない訳やないけどな」

 「と言いますと?」

 「マルメル君と戦ってる時、あの子は徹底して見つからない位置取りやったからウチから見つかり難い所にいそうやなーって考えたらあそこやったってだけの話」


 ――これがあるからこの人は怖いんだよなぁ……。


 一応の根拠はあるけど判断材料の一部で一番大きな理由は直感。

 ヨシナリには全く理解できないロジックの戦い方だ。 直感、言葉にすると何か凄そうだが、ヨシナリがやるとただの当てずっぽうで、実行しても碌な事にならない典型。

 

 これは参考程度に留めておくかと結論を出した辺りでグロウモスが現実に帰って来た。

 

 「あ、お疲れです。 色々と惜しかったですね。 一先ずは――」

 「――まだ――ってない」

 「はい?」


 流石に連敗は堪えたと思ったので取り敢えず今日の所はお開きにしようかと思ったのだが、グロウモスはそうでもなかったようだ。

 ヨシナリの腕をしっかりと掴むとアバター越しでは分からないが、睨んでいるのだけはよく分かった。


 「まだ、あなたがのこってる! 私と勝負して! すぐ!」

 「あー、俺ですか? まぁ、構いませんけど今日の所は止めといた方が……」

 「じゃあ準備して!」

 「あ、はい、分かりました」


 グロウモスの戦い方はもう見たのであまりフェアじゃないなと思いながらヨシナリはウインドウを操作してフィールドへ移動。 負けが込んだ所為で声がデカくなったなと思いつつ脳裏で戦い方を組み立てた。



 

 「あー、何というか一回ぐらい勝っときたいんだなぁ……」

 

 マルメルは気持ちは分かるなと思いながらウインドウを可視化して戦場を俯瞰する。

 だとしたらヨシナリを選んだのは失敗だと彼は思っていた。

 ふわわも大概だったが、グロウモスのスタイルはヨシナリと致命的に相性が悪い。 


 「マルメル君はどっちが勝つと思う?」

 「まぁ、ヨシナリっすね。 相性悪いの俺でも分かりますよ」

 「やねぇ……。 勝ち星拾いたいならマルメル君に再戦を挑んだらよかったのに」

 「次やったら俺が絶対負けるみたいな事言うの止めてもらえません!?」

 「え? 負けるでしょ?」

 「ひ、酷ぇ……」


 自然に返されたマルメルは大きく肩を落とす。 

 

 「それはそれとして、マルメル君的にはあの子どんな感じ?」

 「うーん、今の所は何とも。 ヨシナリが前に出るようになったので援護してくれる奴が居るとありがたいですし、狙撃の精度も高いんで戦力としては歓迎ですね」

 「戦力として?」


 暗に仲間としては微妙と言っているようなものだった。

 

 「今の所はって感じですけどね。 今回限りの付き合いになるのか、正式にメンバーになるのかは何とも言えませんが、あんな調子だと正直しんどいっす」

 「そう? ウチは可愛いって思うけど?」

 「へぇ、どんなところが?」


 ネガティブを撒き散らしている印象だったのでマルメルとしてはあまり好きになれなかったので、いい所があるなら聞いておきたかったのだが――


 「とにかく自分が強いんだって見せつけたがっている所とかウチは好きやなー。 何回も戦えそうやし」

 「……そっすか」


 マルメルには理解できない思考だったので会話を打ち切って無言でウインドウへと視線を向けた。

誤字報告いつもありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[一言] 毒吐きまくりが調整メンバーに居たらやりにくいからねえ マトモに感想戦できるならまだいいけど、現状そうでもなさそうだし まあ認めたら口悪いくらいになる人も居るからなんやかんやなんとかなることも…
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