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Intrusion Countermeasure:protective wall  作者: kawa.kei


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 エネルギー無効化フィールドとプレイヤーは呼んでいるが正確には減衰だ。

 通常のエンジンと違い、エネルギー系の動力はゲームの設定上、オーバーテクノロジー――要は詳細が不明のエネルギーを源としており、それを用いる事で機体、武器の動力としている。

 

 このフィールドは範囲内で発生するエネルギーの発生を抑止する効果があるのだ。

 それにより通常エンジンではないエネルギー系動力依存のエンジェルタイプは飛行すらままならずに落下する。

 ただ、先述したように減衰――つまり影響下で発生するのは出力の低下なのだ。


 エネルギー弾は敵を射抜く事が出来ないただの光となり、音速の壁を容易く突破するウイングは空気の抵抗に容易く屈する。 ならばこのフィールドはエネルギー系の武装や動力を持った機体にとって絶対の天敵なのか? 使用されればもうどうしようもなくなるのか?


 ――答えは否だ。


 確かに推進力は落ちる。 武器の威力は減衰する。

 実際、エイコサテトラはフィールドへ飛び込んだと同時に大きくその速度を落とした。

 だが、本体とウイングに使用している六基、合計七基のジェネレーターが生み出すエネルギーは減衰したのであればそれを捻じ伏せる出力を出せばいいと言わんばかりに不可視の圧力を捻じ伏せる。 加えてエイコサテトラの両腕についているブレードは実体剣にエネルギーの刃を纏わせる事で切断力を上げるといった代物なので減衰する環境下でも武器としての機能は充分に維持していた。 


 これは単純なごり押しだ。 大抵のプレイヤーはフィールドの影響下に落ちたと同時に機体の制御が難しくなるので無意識に機体の安定に意識を傾けてしまう。

 何故なら最高速に達した機体がそのまま墜落すれば大破という非常に高いリスクが付いて回るからだ。

 仮にそうならなかったとしてもエネルギー系の装備は非常にデリケートなので、変な着地をして異常が発生すれば目も当てられない。 


 リスクは冒せない。 だからエネルギーの減衰フィールドを使われたら効果時間が切れるまで距離を取るかフィールド圏外からの実体弾を用いた飛び道具を用いる。

 それがセオリーだ。 ならSランクプレイヤーは? セオリーに従うのだろうか。


 あり得ない。 

 ラーガストは勢いを一切殺さずに手近にいたキマイラタイプをブレードで刺し貫き、フィールド圏外へと突き抜けて行った。 あまりの挙動に一瞬、コンシャス達の思考が空白になるが、Aランクプレイヤーだけあって立ち直りは早く即座に次の手を打つべく動き出す。 コンシャスの想定ではエイコサテトラはフィールド手前で急上昇か急旋回でこちらの射線を取らせない立ち回りで時間を稼いでくる。


 正面からはない。 その考えが意識を散らし、反応が僅かに、そして致命的に遅れてしまった。

 

 「散開、フィールドから出ないように注意!」


 コンシャスは即座に指示を飛ばし彼の仲間達も即座に応じる。 

 固まって弾幕を張る為に密集していたが、狙いを絞らせない為に散って各々武器をエイコサテトラの背に向け――そこには大破したキマイラタイプのみでエイコサテトラの姿がない。


 「クソ、いったいどこに――」


 声を上げた仲間の一人が飛んできた刃に胴体を貫かれる。 

 そこでようやくコンシャスはエイコサテトラの居場所とその動きを捉えた。

 ラーガストは恐ろしい事にフィールドの圏外、縁をなぞるように移動しており、腕のブレードを射出したのだ。 これで武器を片方使わせたと思いたいがそうもいかない。


 コンシャスの視線の先でエイコサテトラの腕から新しいブレードが出現しているところだった。

 液体金属刃。 機体内に充填されている液体金属で刃を形成する機能だ。

 それによりブレードの破損を修復し、代わりの刃を形成する事すら可能。 


 液体金属自体を精製する事は出来ないので何度も使える手段ではない。

 

 「くたばれSランク!」


 周囲の味方機が突撃銃や短機関銃を乱射。 エイコサテトラを捉えようとするが掠りもしない。

 エイコサテトラはフィールドの表面を撫でるように移動し、まるで嘲笑うかのように攻撃を回避していく。 ラーガストは窺うように周囲を飛び回る。


 その様子はまるで海上で立ち往生した獲物を狙う鮫のようだった。

 風を切る音。 また一機、飛んできたブレードに貫かれて大破する。 あっという間に三機もやられた。

 

 「調子に乗ってんじゃねぇぞ!」


 このままでは嬲り殺しにされると判断したのか残ったキマイラタイプが変形してエイコサテトラへと突撃。 内蔵機銃を連射しながら肉薄するべくフィールド圏外へと出るが、出た瞬間にブレードで両断されて大破する。 


 失敗だ。 コンシャスは策が不発に終わった事を察した。

 当初のプランとしてはフィールドを展開しつつ敵の攻撃手段を制限。 

 遠距離から一方的に攻撃して精神的な消耗を強いつつ敵の狙いを誘導する事だ。


 要は仕掛けたフィールドの発生装置を狙わせ、そこを刈り取るつもりだったのだが予想に反してラーガストは発生装置を完全に無視。 恐らく最初の突撃でフィールドの範囲を掴んで周囲を飛び回る事でこちらに圧をかけ、ブレードの射出によって削る事で圧をかけて判断力を鈍らせる事が狙いだ。


 そしてそれは見事に嵌まり、黙っていられなかった一機が飛び出して撃破された。

 最初のアタックで一機、ブレードの射出で二機。 我慢できずに飛び出し、両断された機体で四機。

 自分を残して全滅してしまった。 同時にフィールドの持続時間も限界だ。


 それを肯定するかのようにエネルギーが尽きた発生装置が機能を停止。

 策はもう残っていない。 後は自分の力で切り抜けるしかない。

 コンシャスは覚悟を決め。 フィールドの消滅と同時に推力を最大にして後退。

 彼の機体も機動力には自信がある。 せめて引き撃ちができる体勢にと思ったが既にエイコサテトラが目の前にいた。


 その時点で負けは悟っていた。 エイコサテトラ最大の長所は加速と動きの精密性とコンシャスは認識しており、そんな機体から遮蔽物、障害物が全くないこの地形で逃げ切れる訳がなかった。

 加えてあの動きを捕捉できる反応速度を捻りだすなんて真似も同時に不可能。 つまり詰んでいる。


 「機動力が売りの癖にそれを殺してわざわざ案山子になるとか何を考えてんだ?」

 「はは、まったくもってその通り。 覚えとけよSランク。 次はこうはいかないから――」


 一閃。 コンシャスは機体諸共に両断され撃破される事となった。

 取り合えずもっと練習頑張ろう。 彼は打倒Sランクをと強く念じ、戦場から脱落した。 

誤字報告いつもありがとうございます。


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