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僕らのらんど  作者: 鳴神とむ
65/77

65. 賭け

 僕たちは早速、虎生とつくしさんに話を持ちかけることにした。



「ブルーストーンの力で隕石を破壊できないかですって?」



 二人はなぜかナイトプールを楽しんでいた。つくしさんの黒いビキニ姿がなんともセクシーで興奮する。



「そんなことをしたら分散した隕石が散らばって、余計に被害が大きくなるかもしれないわ。それにブルーストーンでバリアは張れるけど、攻撃は試したことがないのよ。もし失敗したら、バリアの効果さえもなくなってしまうかもしれないわ」


「でもっ……ブルーストーンの力で守れる範囲は限られてるんですよね? ラグナロクランドにいる人たちはいいですけど、他の地域に住んでる人たちは? ここに避難するなんて限られてるし、見殺しにするしかないんですか?」



 まあやさんが切実に二人に訴えかける。



「ブルーストーンの力を使って爆破……いや、完全に消滅させることはできないんですか?」



 なんて口に出してみたけど、つくしさんの意見を聞く限り実現はできなさそうだ。試してないことをやるなんてリスクが大きすぎるよな……。

 そう諦めかけたその時、



「ちょお待てや、破壊できないこともないで」



 プールに潜っていた虎生がザバッと顔を出した。



「えっ……!?」


「実はな、こんなこともあろうかと、ひそかに船にレーザー兵器を搭載させたんや」


「!」



 それはつくしさんは全く知らなかったようで、僕たち以上に驚いていた。



「虎生、どういうことなの!?」


「悪いな、つくし。わいは軍と協力して、隕石やミサイルを迎撃するためにレーザー兵器の開発に手を貸してたんや。せっかくの力なんや、有効に使いたいと思ってな」


「なんてことっ……」


「じゃあそのレーザー兵器で、隕石を破壊することができるってこと!?」



 まあやさんが虎生の話に食いつく。



「その代わり、莫大なエネルギーが必要になるけどな。お前らにできるか? もしかしたら本当に命を落とすかもしれんで」


「!」



 そう言われて一瞬戸惑った。でも僕とまあやさんはすぐに同じ気持ちになった。まあやさんの震える手が僕の手を握りしめる。だから僕もギュッと握り返した。



「それでも、皆が助かるのなら」



 どっちにしろ、助からないかもしれない。それならやれるだけのことはしたい。



 僕たちは最後まで戦い続けるのみ。

 ……愛する人と、大切な仲間と。



 翌日、その話は全プレイヤーに告げられた。みんな「命を落とすかもしれない」ということに最初は戸惑っていたけど、反対する人はいなかった。



「わいは今からログアウトしてレーザーの準備に取りかかる。安心してえや、代わりに助っ人を何人か送るさかい」



 そう言って虎生がログアウトするとすぐに、新たなプレイヤーたちがログインしてきた。

 彼らは本物の軍の人たちだった。すぐにモンスター討伐に参戦すると、着々とレベルを上げていった。



「この調子なら、すぐに生命体エネルギーがたまりそうね!」


「うん、さすがは戦闘のプロ。どうする? 僕たちもレベル上がってきたし、そろそろレベル90のモンスターを倒しにいってみる?」



 僕とまあやさんはレストランで一緒に食事をしながらこれからのことを話し合っていた。

 なんだかあれから、戦闘以外はまあやさんと二人きりになることが多い。月影がゆずさんと他の女子たちに毎回振り回されてるってのもあるけど。



 みんな、必ず誰かと過ごしている。

 きっとログアウトしてもしなくても死ぬことからは逃れられないだろうから、その時がくるまでなるべく人肌を感じていたいんだと思う。



 だけどれんじだけはいつ見ても一人だった。みんなより遅く帰ってきては虚ろな目をしながら食事をし、部屋に戻る。

 そしてその様子をいつも影から心配そうに見守っているアカツキちゃんがいた。アカツキちゃんは皆の前では明るく振る舞っているけど、たまに思い詰めた表情でれんじの姿を追っていた。



「……辛いよな……」



 れんじの事情を知っているだけに胸が痛む。

 そしてそんな二人を見ていられないと思った矢先、アカツキちゃんが何かを決心したようにれんじに近づいた。



「れんじ、あのね……ちょっと話さない?」



 久しぶりにれんじに声をかけたアカツキちゃんはちょっとぎこちない。



「……」



 だけどそれでもれんじはアカツキちゃんを無視する。



「れんじ、お願い。話がしたいのっ……」


「……」



 僕は泣きそうになるアカツキちゃんを見ていられなくて立ち上がろうとした──その時。



「その男に関わらない方がいいわよ、こいつは人殺しなんだから!」



 猫耳女子の一人が二人に近づくと、わざと周りに聞こえるように大声で言い放った。



「!」



 さすがのれんじも驚いて席を立つ。



「お前っ……」


「…………れんじが、人殺し?」


「!」



 ついに過去をアカツキちゃんに知られてしまったれんじは、呆然とその場に立ち尽くす。



「そうよ、人殺しなのよ。だからこの人にはヒトの心がないの。現にあなたもずっと無視されてるでしょ? 身勝手な男なのよ」


「……っ……」



 アカツキちゃんはショックを受けたのか黙りこんでしまった。

 その事実を知ってしまった、まあやさんや他の皆も呆然とれんじを見つめている。



「人殺しってマジかよ……」

「確かにあいつならやりかねないな……」



 誰かがボソッと呟いた。

 周りを見渡すと、何人かがそういう目でれんじを見始めていた。



「あいつには近づかない方がいい……」



 ザワザワとする中、また誰かが言った。



 まずい、このままではれんじが完全に孤立してしまう。アカツキちゃんにまでそう思われたら、れんじは……。



「……言わないで……」


「は?」


「れんじのこと……悪く言わないでよ!!」



 アカツキちゃんが叫んだ。



「何言ってるの、あなた正気? この男は人の命を奪ってるのよ。仮想世界でモンスターを倒すのとはわけが違うのよ?」


「……そんなの、関係ないよ!! あたしにとってれんじは大切な人っ……ただそれだけなんだから!!」



 アカツキちゃんが涙を浮かべながら必死に叫ぶと、れんじは悲痛な面持ちでアカツキちゃんを見た。





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