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僕らのらんど  作者: 鳴神とむ
19/77

19. 本物ですか?

「どうしよう、このままじゃ月影くんがっ……」


「だからって僕たちの魔法で太刀打ちできるかどうかわからないしな……」


「へぇ~お兄さんたち、魔法使えるんだ?」



 その時、背後で声がした。

 びっくりして振り返ると、迷彩服を着た小柄な少女がサブマシンガンを持って立っていた。

 彼女もさっきの男と同様、ヘルメットとゴーグルを装備している。まだ若そうだ。


「あなた……自衛隊なの?」


「うんにゃ、ただのサバゲー大好き女の子だよん」


「サバゲー?」



 ということは、その手に持ってるのはおもちゃ? だからBB弾が落ちてたんだな。



「ここはあたしたちの戦場だからさ、あたしたちがパンダをぶっ飛ばす!」



 そう言うと、サバゲー大好き少女はニヤリと笑った。



「え……待って。それおもちゃでしょ? 倒すなんて無理よ!」



 まあやさんの心配をよそに、サバゲー大好き少女は竹で身を隠しながらパンダに近づいていった。よく見ると、別の方向からも迷彩服を着た男二人が少しずつパンダに近づいている。



「あの人、さっきの……」



 彼らは指で合図をし、三人で射撃するタイミングを見計らっていた。



「無謀よ、みんな死んじゃうわ!」


「待って、まあやさん!」



 僕は走り出そうとするまあやさんの肩を掴んだ。今行けば彼らの邪魔をすることになる。彼らもおもちゃで勝てるとは思ってないだろうし、何か策があるんだろう。そう考えてると、月影がパンダから距離を取った。

 瞬間、彼らは一斉に発砲した。



 ダダダダダダダッ! ドンドンッ!



 凄まじい音が耳をつんざく。

 火薬の匂いが充満する。



「な、なにあれ……本物!?」



 まあやさんが両耳を押さえながら叫んだ。

 銃の連射攻撃で辺りはたちまち砂埃が舞い上がり、月影たちの姿を隠した。かと思いきや、それを掻き消すようにパンダが暴れだした。



『ヴォオオオオオ!!』



 体に沢山の弾を受けているにも関わらず、恐竜のような鳴き声で威嚇するパンダ。



「化け物っ……」



 僕は思わず呟いた。



「頭を狙え!!」



 拳銃を持った男が叫んだ。その瞬間、サバゲー大好き少女の体が宙を舞った。暴れるパンダから一撃くらったのだ。



「アカツキ……!!」



 迷彩服を着た男たちが叫ぶ。

 少女の名はアカツキというらしい。

 更に攻撃をくらった少女の体は五メートル先まで吹っ飛ばされ、複数の竹を割り、数回バウンドして地面に転がった。



「アカツキちゃん……!!」



 まずいと思った僕は彼女の名を呼び、咄嗟に走り出した。



「アカツキちゃん!!」



 うつ伏せになって倒れている彼女の体を起こすと、閉じていた瞼がピクリと動いた。



「あ……れ、お兄さん……なんであたしの名前知ってんのぉ……」



 彼女は力なく笑った。

 そしてゴフッと血を吐いた。

 喉の奥からヒューヒュー音がする。



「今、回復するから!!」



 僕は即、治癒魔法ヒールを使った。

 アカツキちゃんの体が緑色に光り、アカツキちゃんについていた傷が徐々に消えていく。

 しかしまだ回復する様子は見られない。



「どけ!!」



 突然、僕は突き飛ばされた。

 迷彩服を着た男が僕からアカツキちゃんを奪い、なにやら緑色の液体が入った注射のようなものをアカツキちゃんの腕に注入した。



 たぶんHP回復薬なんだろう。

 すぐにアカツキちゃんの呼吸は正常に戻った。



「ケホケホッ……。あれ……れんじ?」


「……大丈夫か?」


「ごめんっ……あたし、油断した!」


「無理するな。あいつは俺が倒すから」



 慌てて立ち上がろうとするアカツキちゃんを座らせ、迷彩服を着た男れんじは険しい顔つきをしながら立ち去った。アカツキちゃんは彼の背中を心配そうに見届ける。



「あ、お兄さんもありがとうね! やっぱり魔法ってすごいね!」



 僕は苦笑した。



「すごくないよ、まだレベル低くてさっきの回復薬に比べたら全然……」


「あ~あれは全回復する貴重なアイテムだからね! でも一個しか持ってなかったのにあたしに使っちゃって……これからどうしよう」


「よかったらこれ」



 僕はそらじじいから貰った小瓶に入った回復薬をアカツキちゃんに渡した。



「いいの?」


「うん、中回復だけどね」


「ありがとう! えっと……」


「僕はアキラ」


「アキラ、ありがとう!」



 アカツキちゃんは嬉しそうに微笑んだ。



「あ、でもあのパンダ。めちゃくちゃ強いから、れんじやヒロキも攻撃受けちゃうかもしんない。ね、アキラ。その時はさっきの回復魔法お願いできるかな?」



 僕はさっきれんじに突き飛ばされたことを思い出した。正直あまり関わりたくないけど、女の子の頼みなら仕方ない。



「うん、わかった」


「ありがとう!」



 アカツキちゃんの笑顔につられて、つい微笑んでしまった。

 僕に妹がいればこんな感じなのかな……。

 何でもしてやりたくなる。



 気づけば僕は無意識にアカツキちゃんのヘルメットを撫でていた。



「そうだ、防具も必要だよな……」



 あんな攻撃をまともに受けたら、回復薬がいくつあっても足りない。




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