13. 一人vs三匹
まあやさんのいる二階の部屋へ行こうと階段を上っていると、ガシャン!とリビングの方から音がした。
「!」
危うく心臓が止まりそうになる。
リビングからは「ギャアギャア」と、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
ゴブリンだ。
どうやらリビングの窓を壊して中に入ってきたらしい……やっぱりここも安全じゃなかったようだ。
音を立てないようにゆっくりと階段を上ると、僕はまあやさんが眠っている部屋のドアを開けようとした。が、鍵がかかってる。
「……っ……」
今ここでドアをノックして声を出せばやつらに気づかれてしまう。しかし二階に上がってくるのは時間の問題。それならここで武器を構えて、階段を上がってくるゴブリンどもを叩いていくしかない。
絶対まあやさんを守らないと──!
もしかしたらあの時気絶したゴブリンが、仲間を連れて復讐しにきたのかもしれない。
釘バットを持つ手が震える。
果たして僕に戦うことができるのか?
もしかしたらトシヤのように自分も死ぬかもしれないと思ったら怖くて仕方なかった。
僕は静かに息を吐くと、他に武器になるものはないか周りを見渡した。二階にはまあやさんがいる部屋の他に物置がある。
一階ではゴブリンたちがドタンバタンと物を荒らしていてまだ二階に上がってくる様子はなかったので、物置のドアをそっと開けてみた。中には掃除道具と使い古されたお鍋の蓋があった。
お鍋の蓋……某RPGではあまり使わないものだが、今は十分盾の代わりになる。
僕はメニュー画面を見て装備を確認した。
右手 釘バット
左手 お鍋の蓋
パッと見ダサいが、ないよりはあった方がいい。あとバケツとモップも使えるかもしれないから近くに置いておこう。
あと他に何かないかメインメニューからできることを探した。なんでもいい、自分が有利になる情報を知りたい。
アイテムはない、呪文は治癒のみ。
マップは現在地周辺まで表示されている。そこに数個の緑のダイヤマークと赤のドットマークがあった。
おそらく人数からして緑のダイヤマークは僕たちで、赤のドットマークはゴブリンだろう。
とすると、このログハウスにいるゴブリンの数は三匹になる。一人で三匹相手はつらいが、この一人ずつしか通れない階段なら……。
その時、ミシッとそばで音がして僕は慌てて振り返った。
「!」
階段を上ってきている一匹のゴブリンと目が合った。
ゴブリンは卑しい目つきでニヤリと笑う。
そして猛スピードで階段をかけあがりジャンプしてきた。
「うわああああああっ!!」
僕は闇雲に釘バットを振り回した。
『ンギャアッ』
一発はどこかに当たったようで、ゴブリンは僕から距離をとった。しかし思わず叫んでしまった僕の声で、あとの二匹も階段を上ってきた。
「……全然だめだ、こんなの、無理ゲーだ」
やつらは見た目人間の子供のようだが、すばしっこくて頭もいい。しかも残虐な生き物。戦うなんて選択するより、逃げた方がよかったかもしれない。
でももう、戦うしかない。
死ぬ気で戦うしか───!
『グエエエエッ』
一匹のゴブリンが僕に襲いかかってくる。僕はその攻撃をお鍋の蓋で防御した。ベコッと音をたててお鍋の蓋は変形する。
だめだ、やっぱりリアルでもお鍋の蓋は使えなかった。が、僕は変形したお鍋の蓋でゴブリンを突き飛ばした。そしてゴブリンがよろけたその隙に、釘バットを頭に叩きつけた。
『ギャアアアッ』
ゴブリンが倒れた。
「やった!」
しかしすかさず二匹のゴブリンが僕に襲いかかってきた。




