12. ヤバイやつら
「それならお師匠様に蘇生アイテムがないか聞いてみます。それにレベル99なら、呪文も知ってるかもしれないですし」
早速月影はソファーから立ち上がってリビングから出ようとした。
「……うっ……」
しかし突然、胸を押さえて苦しみだした。
「どうした!?」
「……なんだか急に、身体が熱くっ……」
そう言うと月影は荒々しく呼吸をし、床に崩れた。明らかに様子がおかしい。
「大丈夫か、月影!」
僕は急いでキッチンで水をくみ、月影にコップを渡そうとした。
「……アキラさんっ……」
バシャンッと水がこぼれた。
月影はコップよりも僕の右手を握ってくる。
「へ?」
「……アキラさん……俺すごく……熱いんです!」
「あ、ああ……だから水……」
「そうじゃなくてっ……どうしたらいいですか?」
「は? 何が」
月影はうるうると瞳を潤ませる。
何か嫌な予感がした。少し視線を下にずらすと、月影の股間が物凄く膨らんでいるのが見えた。
「お願いしますっ……少しだけ……触ってもらえませんか?」
「───」
僕は言葉を失った。
意識がどこかへ飛びそうになった。
すると月影が僕の右手を自分の股間に近づけさせようとしたので、僕は慌てて振り払った。
「僕にそっちの気はない!」
僕は乱れる月影を残して、リビングから飛び出した。
「な、なんだあれっ……冗談じゃねーぞ!」
月影ってそういう趣味だったのか?
だったらこの先ずっと一緒にいたら、僕の貞操が危ないじゃないか!
吐息混じりで話す月影を思い出して、全身に鳥肌がたった。
「キモイキモイ、無理無理無理~!!」
パニックになった僕は外に飛び出した。
ログハウスの中にいれば、確実にやられると思ったからだ。
「……アキラ……さんっ……」
ログハウスの中から月影のうわずった声がする。きっとどこまでも追いかけてくるに違いない。そう思って暗闇の中を走っていこうとした、その時。
何か固いものと接触した。
なんだろうとそれを手で触ってみる。
「刀……?」
「それはわしの竿じゃ」
「!?」
カチッと音がしたかと思うと、暗闇からそらじじいの顔が浮かんだ。
「うわっ……!!」
「こんな夜中にどこに行くんじゃ」
そらじじいは懐中電灯で僕が握っているものを照らす。そこにはさっき言っていたそらじじいのグロテスクな竿があった。
「う、うわあああっ! 触っちまった! うわあああっ!!」
僕は手を洗いに行こうと、玄関のドアを開けた。
「あ、アキラさんっ……!」
今度は月影がなぜか上半身裸で立っていた。
「なにやってんだよ、お前ら、アホか!」
もうやだ、こいつら。
もう泣きたくなってきた。
そう思った時、
《ブー!ブー!》
《モンスターが接近中!》
《モンスターが接近中!》
スマホから警告音が鳴った。
突然の警告音に身体が強ばる。暗くてよくわからないが、暗闇の中に何かがいる気配を感じた。
「気をつけてください! アキラさんは危ないのでログハウスの中へ入ってください!」
さっきまであんなに乱れていた月影がキリッと言い放つ。さすがにこんな時までふざけるほどバカじゃなかったようだ。
「アキラ、まあやさんを守るんじゃ」
どこに隠し持っていたのか、そらじじいが僕に武器を渡してきた。
「これは……」
なんと釘バットだった。
「行くぞ、月影」
「はい、お師匠様!」
そらじじいと月影はモンスターの気配がする暗闇の中へと消えていった。残された僕は悪寒を感じ、慌ててログハウスの中へ入った。
「まあやさんを起こさないと……」
うるさいくらい心臓がバクバク鳴っている。外にいるモンスターはきっと月影たちが倒してくれるだろうけど、モンスターが何体いてどこからきてるのかわからないから油断はできない。




