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伝説の相棒  作者: 龍美邦彦
9/20

大体わかってきました

 ゼルツは屋根の上で本当に初めてみるヴィリオの疲れ切った顔をみてギルドの仲間でもなく教師としてでもなく、変に気をつかいヴィリオに話し出す。


「お前、なんか問題を抱えてんなら相談にのるからな、無茶すんなよ?」


 ヴィリオはちょっと休憩をしてもう気を取り直しており。


「は?…まぁさきほどは身の危険を感じてましたがもう大丈夫ですよ?どうしました?」


「ならいいんだが…お前のあんな顔見たの初めてだったからちょっと…な?」


「確かに…あれほどまいったのは義母さんとの修行以来ですね…ちょっと思い出して気分が暗くなってました、ですが安心してください。ちゃんと出店は監視してたんで」


 ゼルツはじっとヴィリオの顔をみつめる。気持ち悪いですよゼルツと、言うものの、見た感じまだ疲れが残っているように見えたのだった。


「こっからは俺が従業員を魔眼で監視する。お前は俺が念話するまで休んどけ」

 この3年でヴィリオのことは大体わかるゼルツである。ギルド設立以来からの関係で学校ではめんどくさがりだけど仕事や魔法関連はついいつも頑張ってしまう傾向がある。

(ノキさんじゃないけど俺も親、子を持つ身だからな。こいつに息子的な感情でも芽生えちまったかな…)

 心の中で思い、じゃ行ってくる、と告げ人ごみに紛れて出店を調査する。もちろん魔具を使いゼインになっている。


(従業員は1人、奥に誰かもう一人黒いローブを頭まで被ってるやつがいるが俺の魔眼は誤魔化せねえ、顔は…ほう…『天の堕天』の兄弟ギルドだった『地獄の鎖』のゾワルじゃねぇか!昔ヴィリオと一緒に潰して逃げられた奴か…ってことは今は『天の堕天』に入ってる可能性はあるが殺される可能性もあるな…あの出店の兄ちゃんはゾワルに命を狙われてるか共犯だな。とりあえずもうすぐ5時になるし移動するからもうちょっと泳がせるか…)


 ゼルツの読みは大体あっている。ゾワルは憎んでいた。この国とこの国最強になったギルド黒の矢に何が何でも復讐してやろうと。そのためなら使い捨てでも構わないからこの国や黒の矢の奴らみな狂わせてやろうと。出店の男は何も知らされずただ隠し味にこの粉を使えと言われているだけで脅迫されていた。王都もいまでは裏で脅迫されて粉を使わされていた。本当はある人が考え流行らせた、ただただおいしい焼き菓子で縁結びのうたい文句でハートの形をしているだけだったのに。闇ギルドに命を狙われるなんて当初誰も予想していなかった。


 5時になりラブメイトと呼ばれる焼き菓子は最近ではちょっと売れ行きが良くなく。売れ残りは氷のクリスタルで冷蔵である。


 店をたたみ、道具を馬車に運んでいく。一瞬ではあるがゾワルは馬車にすぐ乗って出店のお兄さんに命令する。


「馬車を早くだせ…いつもの場所だ…」

「…はい…」

 命を狙われている故に承諾するしかない。


(糞…なんだか最近売れ行きが少ないし…自分で食うのは怖いし…街はなんか暗いし…挙句にゃあ闇ギルドに命令されて命まで狙われてるし…糞!)

 かわいそうな店員である。王都に居た頃は上手くやってたのにこの1か月は闇ギルドが介入し命令されて作っている。しかも変な薬を作っているなんて発案者のマウルスさんに聞かれたらがっかりされるだろうなあと思っていた。


(ヴィリオ、聞こえるか?標的は店員と馬車の中にゾワルがいた。昔俺達が潰した『地獄の鎖』の生き残りだ、俺は陰から追いかける。お前は上から追いかけてくれ)


 屋根の上で監視していたヴィリオは、了解、と念話し闘気を込め無音で走るヴィリオ。同時に闇属性の影移動で馬車を追うゼルツ。しばらくしてまだ明るい6時に港に着きもう一台の馬車に合流したゾワル達。


 ゾワルはもう一つの馬車から出てきた黒いローブの人物と話、店員二人は、今日もそこで安め、といわれ渋々港の倉庫のなかの空きスペースで寝かされていた。彼らは小声で言う。

「今日の売り上げどうだった?俺のところ売れ残りが20個もでちまった…」

「俺のところも同じくらいだ…なんでこんなことになっちまったのかなぁ…マウルスさんの一級品の菓子料理なのに…」

「あの人は今王宮勤めだし今の俺達とじゃあ天と地の差があるんだろうぜ」

「俺もマウルスさんについてきゃよかったなぁ…」






 ゾワル・フディともう一人の黒ローブは女であった。


「あんたはいくら兄弟ギルドとは言え新入りなんだ。顔も割れてるしこの国を滅ぼしたあとは殺されるかもね」


「そんなの知ってる…俺は復讐できりゃあそれでいいんだ…」

 眼が完全にいかれてるのに女は気づいていたが無視をし定時連絡をする。女が持っていたのは赤い魔具のクリスタルででいつも殺されていた切り捨てとは違いオレンジ色ではなく念話できるタイプだ。気づいたのは二人とも一緒でゼルツは傍受の魔法操作した。


(聞こえますか?M様こちらB応答をどうぞ)


 ゼルツとヴィリオがいるとも知らずに会話を始めだす女。


(あぁ…街はどうだ…)

(順調です、しかし売れ行きが伸び悩んでいます)

(…そろそろ撤退しろ…店員にはあれを使い続けさせるよう命じておけ…でなければ殺すと)

(了解)




「なんといわれた?」

「あたしらは撤退せよだってさ」

「なにぃ?!黒の矢の連中はこの街のどこかにいるはずなんだ!?絶対に殺してやる!?」

「ちょっとうるさいよ?小声で話せ馬鹿」

「俺は撤退しねぇ…まだこの街にいる…」

「別にいいけどあたしは知らないからね?殺されても」




 ゼルツは無詠唱で冥の結界を張り念話をできなくするようにした。はっ!と気づき結界の外に出ようとするが見えない壁に弾かれ動けないことをしった。すぐに解呪しようとする。ゾワルも抵抗し攻撃魔法を放つがただすり抜けるだけだった。二人はなすすべなく時期に睡魔に捕らわれ深い眠りについた。


 ゼルツは無言で遠隔魔法を使いねむらせたあと二人に近付くヴィリオも無言で近づく。念話で確認をする。


(いつものお願いします。やっとちょっとは中間職の人にたどり着きましたね)

(まぁまだわからんがな。こいつらにゃあ念のために8重に魔法陣を使う

(それがいいでしょう)



 ゼルツは冥の魔法で二人の心にある記憶を辿る。


(女はビライア・ビーブ『天の堕天』のまぁ中間的ポジションだ。でだこいつらの念話を傍受してたんだがよ…Mって名前のこいつより上の上司がいるみたいでそいつの名前はマウルス・リービっドって名前らしい、こいつが初めにあのラブメイトの発案者で計画を練ったのこいつだ。当初は本当においしい普通の菓子だったがそいつはそれが狙いでかなり売れ始めたころを見計らってキールグの葉を使用したらしい。今は王宮の料理長だとよ…)


(灯台下暗しですか…オロチを向かわせて正解でした)


(んでだ。魔族は知っての通り人の狂う精神を好む。魔族名はわからねえが上級が一匹手を組んでやがる。こいつにルガードファングをわたしこの国を内側と外側すべてを破壊するみたいだ、ゾワルの方も見てみたが、こいつは逃亡者で新入り扱いされて俺達に復讐を企んでたが、それだけだなビライアはマウルスってやつに命令されたがこいつも何人もいる中間ポジションんの一人にすぎず切り捨てられる可能性大だ)



(結構…二人とも処分します…)

 ヴィリオの目は冷徹だった。『地獄の鎖』は奴隷商とつながっていた、ゾワルも人や亜人、若い子供から屈強な戦士まで捕まえて奴隷商に売り奴隷商はあくどい貴族にその人達を売っていたのだが、ギルド設立からの4か月後の例の話である。ヴィリオが貴族を首を刎ねる前にゼルツは貴族から情報を盗み。その後奴隷商を潰し、さらに繋がっていた闇ギルド『地獄の鎖』に至り、二人は皆殺しの勢いで壊滅させたのだった。当然『地獄の鎖』のギルドマスターからも情報を抜き取ろうとしたが『天の堕天』に途中で殺されてしまい結局はその使い捨ての暗殺者しか捕まえれずその暗殺者は自害したので情報は少なく、その後闇ギルドの一角の『天の堕天』はあまり大きな動きをしなくなっていた。が、今また大きく動き出そうとしているのは間違いなかった。


 ヴィリオは氷の目をしてゾワルの首を刎ね、闘気で首と体を粉みじんにし、ビライアはゼルツの魔法により消滅した。残ったのは。



(どうする?この赤い魔具は?)

(証拠の為赤い魔具は結界を張り保管しててください。ゼルツ、あと相手にこちらの動きを悟られないように。この15日が勝負ですよ?)

 多重結界を魔具に付与した後声をだして話し出す二人。


「なにか考えがあるみたいだな?その顔は」

「えぇ、ラブメイトを姫殿下に食してもらいましょう」

「?は?あれは毒だろ?なんで?」

「別に毒を食べろなんて言ってません。ラブメイトは元は普通のお菓子だったんでしょう?ならそれに解毒剤という隠し味を入れて食べてもらえばいいんです。無害でさらに多少幸せホルモンを分泌するおいしい果実などもいれて姫様に食べてもらい宣伝してもらうんです」


「なるほど…なんとなく見えてきたが王都はどうする?あっちの方が深刻じゃないのか?ってなんだその眼は!」

 ヴィリオがニヤニヤしていた。

「ゼルツ…いまこそ仮病作戦です!」

「俺の給料は?」


「国を守ったとなれば報奨金くらいはでるでしょう。有給でもなんでもいいからこれから王都に向かって同様の手口で敵を始末&店員の救出です。15日で僕ら黒の矢の真価が問われる問題ですよ?」


「お前も食え」


「へ?」


「お前も食べろ!その改良ラブメイト」


「別にいいですけど?」


「わかったなハユード?」


「は?え?」


「別に姫様が食べてもいいがお前のほうが効果は大きいといってるんだ。ハユードとして食べろ。実はラブメイトを食すのは男より女性のほうが多いのがわかってんだ、ハユードを彼氏にしたいってこの前レティア生徒が食べた女子に聞いて回るのをみてたんだ。それも生徒の割合は男子4割は女子学生と恋仲になりたいと、女子は6割でほとんどハユード狙いだってな」


「………僕は味見程度で学生として…」

「だめだ!ギルマス権限でこれは絶対にハユードで食べてもらう、決定!」


「嫌だ―!変な噂が広まったらどうするんですか?!僕は「却下」えぇ…」


「とりあえず倉庫の二人を開放して改良レシピを教えてやれ」

「そうでしたね、あんな場所じゃ生臭いですしね」



 数分した後ヴィリオは白い髪赤い眼のハユードになりゼルツも魔具を外し二人とも本当の姿になり二人を救助したのだった。


「く!黒の矢のハユードさんとゼルツさん?!どういうことですか?あの気持ち悪い黒ローブは?」

「あぁ。あの二人には消えてもらった。一生お前たちの目の前に現れることはないだろう、闇ギルドがまた来たら俺達が撃退してやるから安心しろ」

「くはぁ!!やっと解放される!でもなんで俺達が闇ギルドに捕まってるってわかったんすか?」


「まぁ情報戦を出し抜いただけだそれよりハユードが言いたいことがあるそうだ。なぁ?」


 無言ではいけなくなったため、ハユードもといヴィリオは声色を変えるか迷ったが二人だけならいいかと思い普段通りにしゃべる。


「こんにちはお二方さぞ窮屈であったでしょう。まず初めに残念なことを告げます。あなたたちの売っていたラブメイトには毒を混ぜられています」


「やっぱり…あの粉が…」

「あの粉って何なんすか?あれ使いだして街のムードが一気に暗くなっていくの感じたんすけど?」


「あれはキールグの葉というものを粉にしています二人とも料理をする界隈では聞いたことがあるんじゃないですか?」


「はい、知ってます…第2級指定禁忌食材…そんなものが使われてたなんて…」


「なんてこった…早く王都の方にも伝えなきゃ!?」


「大丈夫です。王都にはゼルツさんに行ってもらい闇ギルドを始末してラブメイトの改良レシピを届けてもらいます」


「確かに今のままではマウルスさんに顔向けができない…どう改良すれば?」


「大丈夫、もっとおいしいラブメイトを作りましょう!それを僕が…買って食べる。それで景気と街の暗い雰囲気が解消されるんですよね?ゼルツさん?」


「ん?あぁその通りだ。王都は俺に任せろ!がんばれば15日程度で解消できる!必ずな!」


「やっとまともに営業できる…う…うぅ…」

 涙を流す店員1と。

「マウルスさんを超えるラブメイト作る…なんか燃えてきたっす俺!」

 やる気にスイッチが入った店員2。

「ではとりあえず今残っているラブメイトは処分してください。私が今日の夜8時までにレシピと材料を届けるので待ち合わせは街の噴水広場で」


「「はい!」」


 そして二人はやっと家に帰れると安堵し馬車にのって帰宅したのだった。



 港にはハユードとゼルツの二人になり。


「じゃあ俺は明日から休みをもらって「今日から」え?」


「王都が危機のときに西のギルド一位の内のギルドマスターが身を賭して事案発生を防ぐのは当然のことですよね?」


 ハユードは布の覆面の裏ですごく笑顔だった。


「あぁだから学校に許可もらって明日「今も苦しんでる人が大勢なんだろうなぁ…」…」


「わかったよ!手紙くらいはミューレン先生に届けといてくれよ!夜8時半に出立するからその前に書いとくから!」


「了解しましたレシピもその時に渡します。あと闇ギルドとの交戦も視野に入れて15日間ほど王都を守ってくださいね」


「はぁ…了解したぁ!気合入れなおすか!うしっ!じゃ8時半に俺も噴水広場に行くからな」


「では今から僕はレシピを書いた後森で食材を調達しますので、リミットは2時間弱ですからね急ぎます!では!」


 覆面を外しモノクルを付けて青闘気で全力で寮に走るヴィリオ。


「いつもめんどくさがりなのにこういうときには図太くなるというかなんというか…まあ若さってことなのかなぁ…年はとりたくねぇなぁ…」


 転移魔法で自分も借家にもどり急いでミューレン先生に手紙を書くゼイン先生だった。

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