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伝説の相棒  作者: 龍美邦彦
7/20

卑怯を通り越して外道です

 シークレットクエストでオフィーリアを影から護衛し3日が経った5月15日の朝10時を回っていた。イルルはレイル家に手紙を出しオフィーリアはイルルとレイル家に行く服装を選んでいた。


「学校での付き合いではありますがお嬢様は王家の人間でございます、このドレスなどいかがでしょう?」


 白の生地のドレスだった。しかしオフィーリアは違うものを選ぶ。


「私はこの青いワンピースがいいと思うのだが…だめか?」


 それは紺色にちかい青のワンピースで軽いダンスパーティーなどで着るようなものだった。イルルは悩みながら、これも捨てがたいですね、と言っていた。


「そうですねお嬢様には白と青が一番似合いますからね。これにいたしましょう」





(服装だけで2時間って…女性はめんどくさいなぁ…)


 外からは壁で見えないものの耳で聞いていたヴィリオは2時間も丘から聞きながらげっそりしていた。なにせこの三日『天の堕天』が暗号を変えたのでとある情報屋から変えた暗号を聞き出したが、切り捨て尾行者もすぐに捕まれば即呪殺なのである。なかなか重要な人物の情報が聞き出せなくてちょっと苛立っていた。


(いくらなんでも殺され過ぎなんですよねぇ…警戒が厳しくなっているのか魔具もすぐに壊せる仕掛けになってますし)


 切り捨て尾行者の裏につながっている者は捕まった場合状況的に危ないと判断されれば命と一緒に魔具も壊されるのである。ある時は街中で軽く話しかけようとしたら殺されたときもあり魔族関係の闇ギルドは文字通りの必死であった。だがいくらなんでもこれだけ用心するということはヴィリオに少し違和感を持たせたのだった。


(これだけの人数集めたにしてはちょっと無理がありますね…何か催眠的な何かを使って何も知らない一般市民も操っている可能性もありますね…ですが催眠した数が馬鹿らしいほどなんですがどういうトリックなんですかね…?もしや…)


 それはこの三日、別に死ななくてもいい人間も死んでしまうという事態がこのウェルカシアの東に起きているからだ。自暴自棄なった男が屋根から飛び降り自殺や強盗まがいなど。実際に眼で見ているヴィリオは相手のやり方にかなり憤りを越していた。自分達のせいでないのは分かっているが、罪もない人を死に追いやるその所業は卑怯を通り越して外道である。義母には優しいと言われたが自分はそこまで優しくないと思ってるヴィリオでも心苦しいものがあった。


 そんな時にゼルツから連絡がくる。


(おい、今大丈夫か?)

 なにやら焦っている感じであった。

(どうしました?)

(リオナ殿下かが毒を盛られそうになっただとよ…)

(そろそろそっちにも手を出すころだと思いました。一番簡単に捕まえれるはずのオフィーリア殿下がいまだに捕まらないのですからあっちにしてみれば緊急のなにものでもないでしょうよ)

 結構ドライに返すヴィリオであったが内心は怒り心頭だった。ヴィリオとしてもそろそろ何かしら他の王家の人間に手を出してもらわないとこちらばっかりで面倒が多いので疲れているのである。まぁヴィリオの肉体というより精神的ではあるが。


(次は国王を狙いますよ、このままいけば)

(な…そんな…俺は学校があるし…)

(なのでオロチを向かわせました)

(はぁ?!あいつが自分から動くわけねぇだろう!?お前なにしたんだ?!)

(オロチの欲しかったアミールの雫を渡したらすんなり行ってくれました)


(アミールの雫ってお前!ここらじゃ手に入らねえ幻の酒じゃねぇか!?どこで手に入れたんだ?)

(義母さんに無理言って送ってもらいました。あんたはまだ未成年だからのんじゃだめだよと杭を打たれました)

 この世界では20歳が成人なのである,、それまでは酒はちょっとした違法なのである。

(な…ノキさんにそんなことお願いしやがって…ノキさんだって多忙だろうに…)


(義母さんは、結構今楽しんでるみたいですよ?)

 義母の話題がでてちょっと頭が冷静になるヴィリオだった。

(それならいいんだが。オロチ…あいつ絶対トラブル起こすぞ?)

(ギルドマスターのあなたが信じないでどうするんですか?まぁわかりますがオロチはやるときにはやる男です、案外いい体験なんじゃないですか?王宮勤めなんて?それよりもゼルツ…調べてほしいことができました)

(なんだ?今日は休日だから手が余ってるが…緊急か?)

(えぇ…アーラさんのところへ行って街の変化についてきいてほしいんです、主に食事関係で)


 そうヴィリオは最近王都から流行りで広まったある料理がこのテヴィリス付近の街にも最近流行っているの知ったのだった。その中の食材にもしあの催眠性のある食材、キールグの葉があればかなりこの国は危うい状況であった。キールグの葉は鬱効果や自暴自棄など精神を蝕む第2級指定の禁忌食材である。通常の使い方は頭がハイテンションになって上がり過ぎて降りてこれなくなった人に薬として調合し処方するものである。もし催眠を解毒する魔法式をつくることができてもこのテヴィリス付近と王都二つを一気に魔法陣を展開するにはゼルツの膨大な魔力でも無理がある。一応義母から解毒の薬草、というより解毒煙玉の作り方はならっているがゼルツと一緒でも量に限界があった。敵はもう明らかに外道な策だった。自分はオフィーリアの護衛で忙しくゼルツにアーラさんのところへ行き近況をしりすぐに対策する必要があった。


(どんな手だろうと全部はねのけてやりますよ?『天の堕天』その裏にいる魔族も根こそぎ滅します…切り札とは最後の最後まで取っておくものですからね)


 まだヴィリオには逆転の切り札が隠されていた。それは義母からもらった大切なものである。



『本当にいいかのかい?10歳の誕生日プレゼントがこんなもので?』

『ぼくが欲しいといって義母さん作ってくれたんです。こんなうれしいものはありません!ありがとうございます!』

『まああんたがいいならいいんだが…』


 それはある石だった。




 二日前の話になる。



 リオナ王女を護衛のクレナとチャオはウィザリア研究所でリオナの助手兼護衛、チャオは研究所の見回り役でクレナはメイドをしていた。


「ふむふむ、確かにヴィリオ殿の言った通り毒であったか」

 チャオは見回りの中で研究社員の中に不信な動きをするものがいたのでその者を調査していたら。ロッカーから毒とみられる液体を見つけたのだった。誰にもばれずその毒だけを持ち去りクレナとリオナ殿下に報告していた。


「その職員、ちょっと監視してて頂戴チャオさん、その毒がなくなったことでなにか上の者に報告する可能性があるから」


 クレナはチャオに監視を提案しチャオも同意した。リオナ王女は涼しい顔をしていたが内心は少しドキドキしていた。


 チャオはその職員に悟られぬように監視していた。通職員の来るタイミングにあわせ通気口から監視をしていたら。クレナの言う通りだった。


「…!薬がない…!」


 慌てたように胸元のポケットから通信魔具を出し。


「こちらWMK、薬を奪われました」


 チャオは魔力操作で傍受するのであった。


(誰かに気づかれたな?)


「ですがまだ追い詰められておりません!どうか命は!…この場から撤退をさせてくださいマウ…ゴブ…」


 いきなり血を吐いて倒れたのだった。魔具のクリスタルも一緒に砕かれていた。


 チャオは職員の脈をはかりもう息絶えたことしる。しかし魔具についてわかったことがあった。かなり荒く作られており魔具には念話ではなく話しかける必要があるということだ。そして一言ではあるが。おそらく声の主は男であり成人している程度の声だったことがわかった。


「むごいことをするのう…まだ30代で殺されるとは…しかしこれは用心深さというよりも焦りからきたもののような感じじゃったな…」


 実際その通り____は呪われており焦りというより狂わされているに近かったがまだギリギリ平静を保っていた、なんともメンタルの強い相手である。


 その後のチャオ達一行には研究所に不審な動きは見られなかったという。



 そして一日前の14日の夜の国王の食事の際だった。



 トラブルメーカーのオロチ・ヤマタだがゼルツの不安を色々いい意味で期待を裏切っていた。服装は執事服で不満だったが持前のカリスマ性ですぐに執事作業をマスターしていたのだ。毒見などもしており。


「おい、誰がこのワインを注いだ?こいつにゃあ毒がはいってんぜ?」


 執事歴60年のハウベ・デリナントはすぐに厨房を視察しにいったが。


「このワインを注いだのはだれですかな?マウルス殿?」


 マウルスと呼ばれた料理長は若いが腕は確かで今年で34歳という情報であった。


「ん?今日はワイン開けた人はいないですぞ?どうしたハウベ殿?」


(もう逃げられたか…主人の危機に反応できなかったとわ…一生の不覚…)





 毒を盛った犯人は気が気でなかった。なにせ国王の命を狙ったのだから。その男はもし失敗すれば殺されるのを覚悟してやったのだ。小心者のゴトロ・ピゲは一生懸命にまだ明るい王都に逃げようとするが。いきなり足に熱い激痛が走ったのだった。


「ギャフ!!」


 勢いあまってこける。だがその右足は引きちぎれていた。


(どうしたゴトロ)


「俺の足がぁああああ!!」


(失敗したな…)

 冷たい声で国王暗殺の失敗を指摘した魔具からの通信だった。

「ちがいますぅぅぅうう!でもあしがあぁああ!」


 見えない敵が居るのを肌で感じる。常人ならば意識がとんでもおかしくないほどの殺気をはなって見えないながらも近づいていた。あまりの激痛に気絶もさせてもらえず苦しむゴトロ。


 大きい声で聞こえてくる。

「どうせそいつは殺すんだろ?『天の堕天』ならちょっと会話でもしようじゃねぇか」


(だれだそいつは?ゴトロ)


「わかりませんんんん!」

(使えんやつめ…)


「どうせ国王暗殺は失敗してもいいんだろう?国王の不安を煽るのが目的。同時に王女さんも同じ目に合わせるきだったんだろうが…国王に関しちゃ一日ほど遅かったな、なにせ俺がいるんだから」


 見えないながらも大きい声できこえる。森の中なので声が反響してどこから聞こえるのかわからない。魔具の向こうの通信者はゼルツでもハユードでもないことを声で悟る。


(オロチ・ヤマタ…)


「ひえぇえええ黒の矢ぁあああああ」


「白と黒じゃなくてホットしてんのか?それは大きな勘違いだ。黒の矢にはクセのつええのがいるまだいるんだぜ?俺みたいなのがなぁ」


 ゴトロは次に腕への熱い痛みを感じた。


「うでぇえええええええ俺のうでええええ」


(ピーピーピーピーうるせえなぁ…計画で失敗したら殺される覚悟があったくせに目の前で死を感じると青い顔しやがって…)

 オロチは東の国の生まれで武士道に通じるものを宿している、故にこういうタチの悪いことが嫌いだが仕事なのでしょうがなかった。


「次からはそっちの意思に関係なく刺客は殺させてもらう、じゃあな____さんよ」


(な…なぜ私の名…


 通信者が心に思っていた瞬間巨大な紅い槍がすべてを潰していた魔具とゴトロごと。


(俺が視線に気づいてないとでも思ったか?____、もうお前は龍ににらまれた牛なんだよ)


 オロチはもう王宮に通信者がいるのを知っていた。しかしヴィリオやゼルツ達に知らせるのはまだ早いと判断した。ヴィリオからは魔族が絡んでると聞いているからだ。通信者には気づいた。これからは監視するつもりだが魔族の動きがなかった。オロチは肌で自然で感じ取っていた。自分も異種族であるからわかる、今回の相手は妙な知恵をもった魔族の部類だと。そしてもしあの爪、ルガードファングが通信者が使うのならオロチだけで問題ないが魔族が使うとなると厄介になると。最悪この王宮が半壊…多数の犠牲者を出す可能性を視野に入れてしまったからだ。


(ありゃあもう呪いにかかって気が気でなくなってるな。平静はそろそろ潮時か…雲隠れするかな?____さんよ)


 大きくなった紅い槍を元の大きさに戻した後さらに小さくし懐にしまった。オロチの赤い槍、ロニアークは別に体から離れようが必ず手元に戻ってくる。血で契約しているからだ。ヴィリオがハユードの時に使う二刀大剣といっしょのように。ロニアークは伸縮と太さを自在に操れる槍である。彼曰く親が自分に与えた最後の武器だったらしい。


(親探しが変な因果でこんなところまで来ちまったが悪い気はしねぇぜ、ハユード。お前は俺より強い。だが俺もお前より強くなってみせるぞ。そして俺は踏破した者たちをもこえてやる!)




 ヴィリオがオフィーリア王女を隠れながら護衛している15日の12時。




 軍の中でも所在がわからなくなっていた、手紙で心配するなと一言書いてあっただけだった。ナナン王女はある人物と戦っていた。12歳程度の体形、短パンにシャツとジャケットを着てその体には似合わない巨大な戦斧を持っていた。


「はっはっは!やはり貴方と戦うと私も腕が高まっていくのを感じるぞ!」


 この一か月、ヴィリオに頼まれて助っ人に来た人物、ナナン王女が気に入ったという相手である。草も生えてない大きなぼこぼこした台地の密集した場所だった。


「一か月で赤闘気か…まぁいいほうじゃないかね」


「まだだ!まだ私は上を行く!誰よりも強くなって見せる!」


「別に良いけど…赤闘気放てるようなったはいいが纏が疎かだよ。もっと全身に薄くではあるが強い闘気を纏うように出しな。それができなきゃハユードは超えられんよ」


「うむ。今まで魔力での身体強化が全てだと思っていたが闘気というのは奥が深いな」


「魔力が精神力から来るものなら闘気は生命力から来るものだからね。初めに闘気から始まり赤闘気、青闘気と順を踏んでいくけどまだ赤闘気で纏ができなきゃ高められた内にははいらんよ」


 助っ人は両手剣で打ち合っていたナナン王女に背を向け、ナナン王女も見守る。そして戦斧をある闘気まで高め振り下ろす。すると大地が数キロにわたって割れ地震が起きていた。


「ここまでなりたきゃまずは纏のコツを学ぶんだね。放つのではなく内側に闘気を込めるんだよ」


「う…うむ」


 素直に聞くナナン王女殿下であった。普段のナナン王女の性格をみていたら絶対にありえないほど素直である。普段は血気勇猛で軍の指揮系統を束ねる冷静さと戦いの際には異常なまでに血をたぎらせて剣をふるう。常に上から目線であり。オフィーリアに自分を超える存在になれという傲慢さを持っている。それがこの助っ人の前ではまるで先生と生徒のような状況である。ナナン王女自身もそんな姿を他の兵士にみられるのが嫌で今は二人きりである。誰にも知られず助っ人に転移魔法でいっしょに飛んできて。修行をつけてもらっているのである。


 ナナン王女は放出を抑え内側に赤闘気を込める。


「そうだよ…いい調子だよ」


 助っ人からみてナナンには才能があった。ならばその芽を伸ばしてやろうとこの一か月修行に付き合っていた。


「く…ふぅ…はぁ…はぁ…だめだ…」


 助っ人は様子をみて。これ以上は肉体に影響すると思い休憩を促した。しかし、まだだ!、というナナンに対し。


「休め、じゃなきゃ修行は終わるよ。体を休ませるのも闘気を高める手段の一つなんだからね」


 仕方ないと言いながら渋々休憩をとるナナン王女であった。


 休憩中は助っ人が一キロ先にある森からとってきた果物やイノシシやウサギなどの肉を食べて自給自足していた。森には湖もありそこで汗を流すこともしていた。基本はこの台地であるが。


 ヴィリオが絶対安全と言えるのはこの助っ人がヴィリオより確実にすべてにおいて勝っていることと、規格外の強さを持っているからである。ナナン王女は聞く。


「貴方はハユードの何なのだ?」


 ここにきて3回目である。このことを聞いたのは。


「ただの保護者のようなもんさ」


 その緑色の瞳からは何か隠しているわけでもなくいつも同じ答えを返してくる。ハユードの保護者ということは親?しかし、ようなもの?疑問ではあった。


 とりあえずナナン王女が無事であるのはヴィリオが考えなくてもいい安心できる所であった。


(黒の矢にもしこんな人がいたなら間違いなく世界最強のギルドなのに自分は黒の矢ではなくただの保護者?であるとは…世界は広いな)


 ナナン王女はほとんどパーティーのこと忘れていたのであった。


「あと15日だよウェルカシアの王宮でパーティーがあるのは」


「あ…あぁそうだったな、今回のパーティーは貴族を呼び集め不審な者を密偵である黒の矢が見極め排除し国の絶対安全を約束するのとわが妹リオナの誕生祭も兼ねているらしい」


「そうかい。そりゃあめでたいね、しかしもし王族貴族全員に毒を盛った料理がふるまわれるとしたらもんだいだねぇ。魔王の爪にあてられた料理人が狂って変なものださなきゃいいけどねぇ」


 助っ人の考えはいつも神がかっている。それはヴィリオが知るところの神託に近い言葉であった。しかしこの言葉を聞いているのはナナン王女だけでその信ぴょう性はナナンには計れなかった。




 パーティーまであと15日であった。そしてヴィリオ達のテストもあと7日後であった。








 そして今日の昼からの2時の約束でオフィーリアはレイル家へとイルルと馬車で向かったのだった

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