時間の問題は知ってました
昼の2時を過ぎ帰宅したオフィーリアとイルルは例の写真の解呪に取り掛かろうとしていた。
「お嬢様、この写真を解呪しますよ?」
本当だったら自分一人で解呪を試みようとしていたが冷静に考えればイルルと作業したほうが早いのに気づきイルルにも手伝ってもらうことにしたのである。
「ああ、まず一つ目は十字魔術式だな」
「そうですね。では解呪しますよ?」
「頼む」
そういってイルルは写真に魔力を送り十字の魔法陣の解呪をしようとする。
「我が魔力の奔流よ我を退ける十字の鎖を断ち切らされたまえ!」
もし本当にレティアが魔法陣で隠された部分を封じたならばイルルの魔力でなら単純に無理やりな解き方でも問題ないのではと考えていたオフィーリアである。イルルは軽く汗をかいだがいたって大丈夫そうである。十字の魔法陣は燃えるように消えていった。
「ふぅ、結構初めを強く封じていたっぽいのであとはお嬢様でも大丈夫だとおもいますよ?」
「ありがとうイルル。あとは普通の組み式だな」
十字の魔法陣を解いたことで表面上に魔法陣があと4つ展開されていた。どれも中等部3年になれば解けるレベルであった。高等部から入学したとは言えオフィーリアは王家の人間である中等部や高等部の一般教育などは専属のエキスパートなどで教育済みである。なので残りの組み式はいたって軽いものであった。ただ初めの十字の組み式は鎖を一本ずつ消していかなければならずそれにはちょっとした薬も必要になっていたが杞憂に終わったのであった。
「無理やり破いていってもいいとおもうか?イルル?」
イルルは観察する。
「トラップはー…ありませんね。いいと思いますよ?あと属性は水のほうがいいと思いますよ?」
「水か…確かにクレナ先輩は風属性に魔力回路が相性がいいといっていたな…では今展開されている魔法陣は火ということか?」
「はい、そうですね」
(確かにレティア会長の魔力回路は火の属性と相性がよく、水属性は少しだが不得手と言っていたな…だとすると本当にレティア会長が…)
「わかった。水属性で解いてみる」
展開されている魔法陣に手を向け詠唱する。
「我が魔力の奔流よ我にこの戒めの魔法を解きあかし真なる姿を我の前に示せ!アクアディスペル!」
写真から青い光が放たれ4つの魔法陣は一気に消えっていった。どうやらあとは魔力量による簡単な封じ組み式だったようだ。
「さすがお嬢様です」
今のオフィーリアの魔力は一般的な高等部3年が高められる魔力最大値よりほんのちょっと上だった。イルルは見事に解呪した主人に対し誉め言葉を送っていた。
「イルルのおかげだ。ありがとうイルル」
そんなことはありませんよ、といい写真を見つめるオフィーリアとイルル。一見は何も変わってないように見えるが。すぐに二人は気づく。
「ん!?この肩のマークは?…確か…黒の矢…ではなかったか?イルル?」
「はい…確かにゼルツ・シュナイダー様の右手の甲には同じマークがありましたね…ではヴィリオ様というのは黒の矢の一人?」
「んー…なぜマークを?」
ここから2キロほど離れた高い丘にヴィリオはいた。普通の常人では見えない豆のように小さい存在でも闘気を目に込め見ればヴィリオの闘気であればすこしの変化でもわかるのであった。そしてゼルツほどではないが熱感知的にオフィーリアとイルルの解呪をみていたのだった。
(たぶん今解呪成功させたみたいですね。あー…まためんどくさいことにならなければいいんですが…)
そんなヴィリオの考えはやはりめんどくさいことになりそうであった。
「学院でギルド―マークを付けるのは確か校則で認められてないはずだぞ?しかもこれはいつの写真だ?もしクレナ元生徒会長がギルドに入る前からこのマークがついていたなら…んん!?…イルル…私はちょっと頭が疲れて来たぞ?」
「はい、これは黒の矢が周知され始め出して聞いたことなのですがギルド結成当時は二人でゼルツ様とハユード様だけだったらしいです。それも3年前の話です」
「この写真がいつのものか知る必要があるな。これを印刷したのは…だめだ…どこにも書いてない…手詰まりか…クレナ元生徒会長に問いただすしかできないな…」
「お嬢様、私が言ったことを覚えていますか?」
イルルは真剣な顔をして言った。
「ん?どのことだ?」
「秘密を知ったがゆえに相手を傷つけたり自分のいる世界とは別の世界に葬ってしまうカードを手に入れてしまうというカードの話です」
「うむ覚えているが…」
「もし校則でヴィリオ様が退学になる可能性は否めませんか?」
ふとよみがえる記憶、『僕は研究者になりたいんです。ウィザリア魔法研究所でね』
「イルル…あの学院は歴史はまだ浅いはずだがリオナお姉様のおかげで知名度が高くなったのは知ってるな?」
「はい、歴史は浅いですがリオナお嬢様やルヴェリア家の令嬢であるクレナ・テリーカ・ルヴェリア様のおかげでだいぶ格が上がったといわれておりますよ?」
「その学院を退学したあとウィザリア魔法研究所に入ることは可能か?」
イルルは考えながら答える。
「それは今の学院になっては無理だと思います。ウィザリア魔法研究所に就職するには学院の授業すらまともに耐えられない者が入れるはずありませんから…学院での実績はかなり影響するとおもわれます」
どうなさいました?と尋ねるイルルだが険しい表情になるオフィーリアをみてすぐに口をつぐんだ。
(退学になれば研究所に入れない…あいつ、このことを隠したがっていたのか…だがただマークを入れただけならマークを消して反省文を書けばまだ大きな問題にはならないはず…だが嫌な思い出ともいっていたしマークを付けたのがいつにもよる…それに元生徒会長との関係…少なくとも3年以内には入れていたのが濃厚だろう…そのマークが今もあるのかどうかも問題だな)
「イルル…私はレティア会長と会議せねばいけないようだ。しかし停学で今は出会えない…どうすれば?…」
「レティア様でございますか?それならばこちらからレイル家に訪問すればいいのでは?休日などに」
「そうか!そうだったな!今は年は違えど学友だからそれも可能だな!ではレイル家に休日赴くと手紙を出してほしいのだが」
「わかりましたお嬢様。ですが私も同席いたします。よろしいですね?いくらご学友といえどレイル家はルヴェリア家と渡り合えるほどの大貴族でございます。それなりに用意をしてもらいます」
「わかっているよ。イルル。いくら学友といえど王家と貴族だ。そのくらいの見識はわかるよ」
(あー…レティア会長と…この対談が終わったあと学校でひと悶着ありそうですね。あー…なんでかなぁ…やっぱりクレナは腹黒いですね…どうせここまで想像してたんでしょうね…)
今度は目ではなく耳に闘気を込めて丘から集中して聞いていたヴィリオであった。その顔はかなり憂鬱であった。