またあの人です
ほぼほとんどの点と点が線になって行き、かなりヴィリオがハユードであることに近付いてしまったイルル。いくら目と髪を魔具で誤魔化し覆面で髪と口を隠しても本当に愛してしまった人がほんの少しの変装したところでイルルはわからないほど観察眼は曇っていなかった。ではなぜほとんどの人が彼に気づかないかというと、基本ゼルツがしゃべりヴィリオが単にハユードになった時に声を聴いた人がいないからである。
(まさか年下とは驚きましたが、でもあと二年で卒業で三年で成人ということで待ってくれってことなんですかね?別に私は黒の矢のハユード…ヴィリオ?さんでも別にいいのに…ってわたしもちょっと急いでるみたいでいけませんね、でもお嬢様には秘密にしてたほうがいいんでしょうね)
屋敷に戻りいつも通りに家事をこなすイルルとそのほかのメイド。
「イルルさん、今日は機嫌がすごいいいですね?この前の恋愛事件になにか進展でも?」
「そうですよ!前は見てるだけで辛そうにしてて、やっと自分の気持ちに気づいて数日たったと思えばもうなんか吹っ切れた感じで、で、殿方はどんな方なんですか?」
「え!?そんなに顔にでてましたか?」
「はい、なんか幸せそうに見えます」
(こんなんじゃいけません!イルル・ロチェル!もっとみんなの模範になるように!)
「コホン、別になにも…といえば嘘になりますし相談にのってくれたので言いますが。相手の方はその…あの…純粋で優しくて…一応受け入れてくれたのですが本当に答えを出すにはまだちょっとかかると…」
「えーなんかその相手ほかに好きな人いるから先延ばしとかじゃない「そんな人がいたならあの人は私を否定しています!」んで…そうですか…」
「なんかもう色々こっちは聞きたいんですけど?」
「あの方は必然的に隠さなければならないことが多いので私からは言えることはあまりありません…相談に乗ってくれたのにすみません…」
「そんなにシュンとしないでくださいよイルルさん、まぁ人の恋路を邪魔するものは馬に蹴られて死んでしまえというし、もういいでしょ?みんな」
「そうだね、あのイルルさんが好きになるくらいなんだから多分本当に裏表のない人なんでしょうね」
(裏と表は使ってる気がしますが基本いいひとなんですぅ!)
言いたいが言えないジレンマに捕らわれるイルルであった。
学院の放課後、オフィーリアとレティアは話をしていた。
「そう…ギルドマークを付けているのは認めたのね」
「はい、でも本人は消すつもりはないそうです、私は彼に剣を習うのを交換条件に黙秘しました」
「んー…しょうがないわ、彼のことは保留にするとしましょう」
「すみません、会長、私の独断で…」
「まぁギルドマークを付けている人なんて隠れてるだけ結構いるものよ?」
「そうなんですか?」
「えぇ、一年前なんて虎の爪のギルドマークを付けてた人が10人くらいはいたわね」
「そうでしたか、当時のクレナ生徒会長はどんな行動を起こしたんですか?」
「別になにもしなかったわね…そういえば」
「疎かにしすぎでは?」
「私もそう思ったけど取り締まってもこればっかりは後からまたつけられた意味ないし、黒の矢のギルドマークを付けているのが彼だけではない可能性もぬぐえないからね」
「ふむ…話は変わるのですがその…なにか甘い香りがするのですが?」
「あぁ…新しくなったラブメイトをもらい過ぎてしまってね…その箱の中に入れたんだけど…食べる?」
「いえ…結構です」
「はぁー…男子ならまだわかるけどこれで女子から告白というのはちょっとね…」
「色々大変ですね、会長、私ももらってメイドたちにわたしましょうか?」
「想って渡してくれた女子生徒には悪いけど、そうしてくれるとありがたい」
その後袋に詰めれるだけ詰めて持って帰るオフィーリアを護衛に入るヴィリオ。一回寮に帰って変装グッズで老紳士に化け尾行中である。だがオフィーリアを狙うものは1人しかいなかった。
(昨日の警告が効いたようですね、まぁ用心に越したことはありませんが)
尾行者に声をかけるヴィリオ。
「ちょっとそこのお嬢さん道を聞きたいんだが」
声色を変えて話しかける。
「え?私?他の人に聞きなさいよ!」
30代の女性の尾行者だ。
「まぁまぁそういわず、ダルクの旗という店に行きたいのだが?」
「はぁ?そんなのここからまっすぐ行けば適当に着くわよ!邪魔しないで頂戴!」
ヴィリオは近づいて誰にも聞こえない声で女性に囁く。
「今までの死者と同じ目合いたくなければ去れ…」
「…!」
振り返るが老紳士はいない。
「今まで何人殺してしまっただろう…君も仲間入りしたいかい?」
前方から聞こえてきてまた振り返るがもういない。
「なんなのよ!このじじい!」
「まだ君は若い、こんなことに身を落としていては私が本当に殺すよ?」
「ひっ!」
脱兎のごとく逃げる女性。
(今日はこれで終わりですかね)
数分もしないうちにオフィーリアは館に着きヴィリオは監視者を確認する。しかし今はまだ明るいのでいなかった。一旦寮に帰るヴィリオだった。
寮にに帰ろうとしたとき途中のベンチにおじいさんが座っていた。おかしかった。そのおじいさんから何も感じられない違和感があったからだ。生きている人間のようには見えず目に闘気を流し見ると老人の周りには糸が張っていた。しかも今周りには誰もいない。すると老人はしゃべりだす。口の中に仕込まれたクリスタルから。
「いつぞやの若いのじゃないか」
「あなたですか?…今度は何のようですか?また遊ぶのですか?」
この老人は傀儡であり人払いの魔法を敷いているのが容易に予想できたヴィリオ。だがまたシャドロンと戦うとなるとちょっと荷が重い気分だった。
「まぁ片意地はらずすわりなさい」
はぁ、といいながら一緒にすわるヴィリオ。
「よく頑張ったな黒の矢の君。君たちのことは色々と調べさせてもらったよヴィリオ君」
「!っどこの筋から情報を?!」
「なぁに、裏で私のことをきいたことがないのか?」
「伝説の情報屋?」
「ふむ、まあ大体あっているな、まぁ自分を伝説にした覚えはないんだがな、伝説とは語り伝えられる説で伝説だ、まあ実際私の本当の体はもう無いのだがね」
「?じゃあどうやっていきてるんですか?」
「簡単なことだ、私は自分の若い時の体を人形で作りそこに魂を入れただけだ」
「人形に魂?!そんな話聞いたことがありません!?」
「そうだろうなぁ…成功は5パーセントもなかったからなぁ」
「貴方はいったい何者なんですか?」
「人形になってこの名を言うのは久しいが私はパペットマスターシャドロンと言う、まぁ知ってのとおりノキやシャスと同じ類だ」
「え?!シャスさんもレジェンドクラス?!義母さんたちとどういう関係なんですか?」
「前に言わなかったか?殺しあったと、それと私は赤子であった君を一回抱いたことがある。まあ泣かれてしまったがね」
「僕の知らないことまで知っているということですか…なにが目的です?」
「別に特に用というわけじゃない、赤子であった君がただノキにだけは笑顔でみんながノキに賛成したから私の養子、いや孫に迎え入れることはできなかったが…どうだ?我が孫のレティアと結婚するというのは?」
「すいませんが僕にはもう先客がいます。会長がいかにきれいな女性でも今の僕には必要のないことです。会長だってそんな勝手にパートナーを選ばれたら怒りますよ?というかみんなって何人の人たちのことをいってるんです?!正直僕はあなたのことがきらいです!」
「そうか、正直な話が聞けたのは好印象だ。その先客とやらを大事にすると良い、ではまたな」
「あ…!」
一瞬で闇の中に消える人形でありもう見つけられないのは目に見えていたので追う気もなかった。
(世の中は広いのか狭いのか判断に苦しみますね…)
一人思うヴィリオ。
夜の茶会という店ではシャスが一人愚痴ていた。
「まったく…あの人は勝手な人だな…僕らに黙って接触して自分のものにしようとするとは…でもヴィリオ君に想い人ができていて良かったところかな、でなければ強引にでも自分の孫を差し出そうとしただろうから…」
一人伝説の魔眼、虹の眼で見ていたシャスだった。




