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罪悪の計算

作者: 人力知能


「ほう、そっちへ行くのかぇ?」


老いた声が訪ねて来た。

その響きから只者ではない存在だとすぐに理解できた。


それは僕がちょうど目の前の空間に、落ちるように入ろうとしたときの出来事だった。

その先は見た目のみならず空気も異様だ

ただし不快でもなく、爽快でもない。

静かであり、全てを受け入れ、けど二度と戻れなくなる。


その理由は明白である。

なぜならここは、現世でないのだから。








アリを見つめる。

僕はアリを見つめ続ける。

吐く息が大きくなる。

自分の境遇について後悔しか沸かない。

気づいたら点々と職や所属を移動。

気づいたら無職になり

気づいたら心身をやられ

支援を受けるみになってた。


けど己の適する居場所はどこかにあるという、期待、プライド

それをずるずると引っ張って、早々。

結局、周りに迷惑、親にも友達にも、迷惑をかけ、

最終的には日本の血税を汚しながら生きている。



生きている意味がない

申し訳ない

みんなに申し訳ない

だけどめんどくさい



そんな思いで、アリをなんとなくみつめる。

こいつらは誰かのためにせっせと集団で働き、でも何を考えているのか。

幸せなのか、惨めなのか。

そんな光景ぼーっと眺める。

そんな日々を過ごすうち、自分の命を断つまで遅くはなかった。














「ほう、そっちへ行くのかぇ?」

その老人が語りかけてくる

「気付いてるかも知れんが、そっちにいくともう完全に戻れぬ。ここはそういう場所じゃ。」



知っている。

僕には生きている価値がない。いやむしろ生きているだけで迷惑なのだ。

負債なのだ。これ以上、迷惑をかけないためにも…


「ふむ。そうとう根が深いようじゃな。だがな。今のお主にはまだ選択肢がある」


そういうと、老人は手を振り上げ、既存の空間の側に別の空間が生まる。

その存在は同じように深く、底がしれない。

だが、どこか温かくも感じ取れた。



「実はな… 正確に言うと、今のお主は完全には死んでおらん状態じゃ。あの世とこの世の境界線におる。その2つの空間によって境界線を跨ぐことになるじゃろう。片方を選べばお主は生き返る、逆もまたじゃ。」



なるほど…

この老人はあの世でいう神様か、何かしら霊的な存在なんだろう。

僕は再び現世に戻る選択肢を与えられたのか…?



だが、それは魅力的なものではない。

なぜならこのまま生き返ったところで、現世での問題は解決していないからだ。

特別な的な力や大金が入るわけでもなく、現状は変わらない。

いやむしろ結局の死ぬチャンスを逃したとして、後悔を背負っていくのでは?

選択肢を与えないでくれ。

迷わさせないでくれ。

考えるのは疲れる。

生きるのはリスクだ



「ふむ、あまり積極的じゃないようじゃな。わしはお主の選択を尊重する。強制もせぬ。ただ1つ、これだけは知ってほしくてな。」


おもむろに老人は語りだす。

「わしのような存在になると、ある程度先のことが見えるのじゃ。高い位置に属するものほど先と可能性が多く見える。お主は自身を無能だと言ったな? だがわしには見えるぞ。生き返れば、とある運命の会社に入ることに。やがてその会社は大きくなり、ゆくゆくは衰退していく日本を救う強大な存在となる。わしはワノ国の神。そんな可能性があるお主とこの国の未来を死なせるのがもったいなくてのぉ。」


そんな、まさかの話だった。

にわかには信じがたい。

だが、もしそれが本当なら…?


今まではずっと劣等感と、いやそれよりも周りへの申し訳の無さで生きていた。

それが変わるのかもしれない。

もし多くの人が救われるのなら、胸を張って生きられるのでは?

黒ずんだ心に、なにか温かく明るいものが芽生えるのが感じた。

まだ…


そう思って足の歩みが少し変わろうとしたとき、


「待ちな」

必要以上に張り上げた声が鼓膜に響いた。


振り向けばそこには大男がいた。軍服で銃と星条旗が似合いそうな立ち姿だった。

「まぁ俺の話も聞いてくれ。」

男はポケットから葉巻を取り出すと、語りだす。


「実はそこのじじいの話なんだが、それには続きがあってだたな。

ジャパンが繁栄しすぎると、あいつらやがてグローバルに進出してありとあらゆる分野を掌握していくんだよ。

そうなると世界レベルでやつらの文化や思想が地球全体に回る。

ジャパンは一見優秀に見えて、社畜、同調圧力、自己犠牲、奴隷の縦社会の文化。

それが世界全体に広がるとどうなる? つまりディストピアの誕生だ。

それは日本にとってはいいかもしれないが、人間社会全体にとっては不幸だろ?

それにこうなった世界は長続きしねぇ… 閉鎖的な社会が自殺を増加させ、緩やかだが人は滅亡していくんだ。

俺は人類の神だ。

大勢のため、というならわかるだろう…?」



そうか…

そうなのか。

結局日本でで大きな貢献をできても、それが将来的により多くの人を不幸にしてしまうのなら

やはり自分は…


再びもとの方向に足が向く。

だがその時、


「待ってください」「待ってくれ」

今度はすらっとした植物の冠と朝布をきた女性と、

その背後には暖色のシンプルな、しかし神々しい服装をまとった男性がいた。


「私は地球の神、この星の大地と自然を司っています」

女性の方が話出す

「人は愚かです。確かに今のままのほうほうが、人類の存亡にはつながるかもしれません。けれど繁栄しきった人類は、やがて他の生命すべてを蝕んでいく。確かにあなたの生存は人類全体には不幸かもしれません。ただ、それがより多くの生命体の存亡と幸福に繋がるとしたらどうでしょうか?」



「それにだ」

男性の方が話す。

「地球を消費しつくした人間は、太陽系まわりの惑星に進出し、その星星の資源も浪費しつくす。

やがては太陽のエネルギーも奪い、争い、太陽光そのものを崩壊させていく。人類はそれでも他の星に住んで生き延びる。だが太陽系は消滅する。

太陽神としはこれを見過ごせん。太陽系には今でも気づかないだけで、多くの存在がいるんだ」



なんてことだ。

人に迷惑をかけないように、と思っていたけど人間以外のことを考えていなかった。

自分はなんて愚かなんだ。他の生命体、生きとし生けるもの、そしてあらゆる資源を考えるべきだったのでは…?



「オマチクダサイ」

今度は白くて無機質などこか人形のような形態が話す

「太陽系 ショウライ 超バクハツ

ショウゲキハ エイキョウ 銀河系 ゼツダイ

オオク 存在 ウバウ

銀河系 カンリシャ、人間 太陽 ショウヒ 大サンセイ」


しまった太陽系だけじゃ足らなかった。

銀河系規模でも……?



「…きいて…」

全てを飲み込む重量を象徴したかのような、漆黒の存在がささやく


「……………銀河………沢山ある……

ここの銀河………他の銀河の邪魔…………

……………銀河群総括として……この銀河いるか…………疑問?」



銀河団であれば……迷惑の観点からも

…結局どうすればいんだっけ?



光り輝く存在が語る

「そそもそもここのの第4宇宙ののの存在、、、余余余余余計。。。。。。

他他のパラレルルルルn宇宙に調和のたたためめめめ」



内なる声が輝くようにささやく

「15次元 観点 && -> (3次元?, &(邪 魔))

∴ 3d xxxx + 死 滅 >>>許 可 」


「いやいや」

「こっちが」

「いやいや」

「あっちが」



そうやって次から次と神だの異次元存在だの、他世界の最高位だの、平行世界の管理者だの

見た目も地位もよくわからないけど、とりあえずすごいんだろうな〜って存在が

やれこっちのが被害が少ない、やれこっちの影響が多いだとゴチャゴチャと喚き合っていた。


その姿はまるでアリが寄集まったようで、

なんだか、とてもアホらしくなった。


アホらしくなって

僕は、さっさと先に一歩を踏み出した。


終わり

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