プロローグ 邂逅
「はっ」
セレインは目覚める。何故かベッドの上に居る。ベッドの横の椅子に座って、ベッドにもたれかかって知らない少女が眠っている。状況が把握できずにそのまま周りを見渡すと、セレインのEウェアが外されて置かれているのを見つけた。とりあえず取りに動こうとすると、全身に激痛が走り、全身の至る所にけがをしていて何故か手当までされている。やはり理解が追いつかずに思考をまとめようとしていると、何者かが部屋に入ってくる。
「お目覚めですか」
中性的な顔立ちの執事服の少年に話しかけられる。
「ここはどこなの?」
「いきなりですね」
「いいから答えて」
「・・・ここはミスト市国です」
「え・・・」
セレインは知らない土地の名前が返ってくることを想定しておらず、言葉に詰まってしまう。
「どうかしましたか?」
「いや・・・知らない国だったから・・・」
「小さな国なので無理もありません、地図を用意しましょうか」
「お願いするわ」
部屋の中にあった棚の中から、小さな世界地図をとりだし、持ってきてくれる。
「え・・・?」
セレインは自分が住んでいた土地どころか、知っている地名・地形の一つも見つけられずに目を疑った。
「ねえ、ソリヴィア共和国はどのあたりにあるかしら」
「そのような国名には聞き覚えが・・・すみません」
「おはよう!生きていたのね!」
傍らで眠りこけていた少女が元気に起きる。
「ジュリアン!起きたなら私も起こしてよ!」
「会話が進まない恐れがあったので、もう少し寝てくださっていてもいいですよ姫様」
「失礼しちゃうわ」
自分がおかしいのか世界がおかしいのかは分からないが、とりあえず目の前の二人は治療してくれたこともありリシアの仲間ではなさそうだとセレインはひとまず安心する。
「ジュリアンさん、でいいのかしら。ひとまず、挨拶だけはさせてもらっていいかしら。こちら、ソリヴィア共和国空軍所属、セレイン・ハルネスです」
「ではこちらも失礼します。私はジュリアン・ホワイエ。このルイス姫の付き人をやっております。姫様も挨拶を」
「私は、ルイス=ミスト=ケストラル。この国の未来の王女よ!」
いよいよ思考回路がおかしくなりそうなセレインだったが、一周回って落ち着くことに成功する。
「とりあえず、何があって私がここに居るのかだけ教えてもらってもいいですか」
「姫様が逃げたかと思ったら帰ってきて、私を連れて何も言わずに走りだし、そこにあなたがそこにおいてある機械をつけて血まみれで動かなくなっていたため、とりあえず手当をさせていただきました」
「魔法とかで違う世界に連れてこられたわけではない、と」
セレインがいた世界にも、異世界に行く娯楽作品は多々あった。もしかしたらと聞いては見るが、特にかっらに原因はなさそうだった。
「で、セレインさんだったかしら、とりあえず怪我が治るまではここにいてもらおうと思ってるんだけど、その後行く当てとかあるの?」
「いえ・・・仕事と宿を探すところからになりますかね・・・」
「じゃあ当分うちにいなさいよ、いいわよねジュリアン」
「セレイン様が構わないのなら」
ひとまず行く当てもないのでこれはありがたい提案だったので、セレインは即答する。
「お願いします」
こうして、セレインは異世界なのかはるか遠い地なのかすら分からない場所に住むこととなった。ルイスとセレインは同じ年齢だったらしく、同じ年代の友人が少ないルイスはセレインに強く興味を持ち、なぜそんな年齢で戦場にいたか、趣味などはないのか、そんな話から始まり、色々な話をし、仲を深めていくのだった。