天使の加護
ミリアムが教会を出て診療所に戻るまでの間、
この数字のこと、というか教会と天使という存在について話をしてくれた。
この世界では六歳ごろになり、
天使の加護が得られると意識に白い数字が表れる。
そういった子供は百人に数人程度の割合で認められるとのことだ。
そうした子供は教会学校に移されて英才教育を受ける。
そして十六歳の成人を迎えると聖国の大教会で洗礼をうけ、
教会長から、具体的な天使の加護について知らされるというのだ。
天使の能力は大きく分けて、
熾天使・智天使・座天使のハイクラス、
主天使・力天使・能天使のミドルクラス、
権天使・大天使・天使のロークラスの3クラスに分けられる。
完全に一致するわけではないが、数字がひと桁だとロークラス、
ふた桁だとミドルクラス、
み桁だとハイクラスと相関すると言われている。
しかしふた桁以上の人物は伝説に残るような稀な存在で、
み桁の存在となると史実でも確認されたことはないそうだ。
当然、ぼくが見えた千なんて言う数字はありえない数字であるし、
白と黒2つの数字ということもあり得ないとのことだ。
ほとんどの加護は天使級であり、数年に1人大天使級が認められるらしい。
クラスの他にどの方面に才能があるかどうかがその他に告げられる。
市政、教育、研究、医療、芸術、そして戦闘。
それぞれの能力に応じて各専門に進むことになる。
数十年に1人権天使級が認められるが、
今まではそれは王家の血筋に限られていた。
統治能力に秀でていることが多く、
大抵はこの聖王国の王様になることが多いそうだ。
そしてもう一つ重要な点、ごくまれに名前を持つ個別の天使の加護を得られることがあるのだ。
その場合その天使の転生者と言われており、その能力は桁を飛び越えており、
ロークラスでもミドルクラス級の力を発揮すると言われている。
聖国の教会長は大天使級であるが、大天使カブリエルの転生であり、
そのため自身はロークラスであるが、ミドルクラスの加護までなら鑑定することができるらしい。
ただその力はこの加護を見抜き伝える力に限定されているとのことだ。
そしてミリアムもこのナンバー持ちとのことであり、
適性は医療であったのことだ。
そのため16歳で洗礼を受けた後、2年間の専門教育を受け、
今年からエリス村の診療所に勤めているということだ。
いっぽうクレアの数字は9であり、
しかも、大天使ラファエルの転生ということだ。
転生者は聖国でも4人しか現存しておらずクレアが一番若い。
適性は医療であったが、転生者は基本聖騎士団に所属することになっており、
クレアは騎士団に所属しながらも
時間があるときには医療の発展に寄与しようと活動しているそうだ。
その夜、僕は今日のできことを振り返る。
今はもう数字は視界に浮かんでいない。
それでもあれは見間違いでなくはっきりとそこに存在していた。
その意味はまだよくわからないが、間違いなく僕の能力につながっているのだろう。
それにあの声。
…………クレアを支配下におきますか…………
あの時あの声にこたえていたら一体どうなったのだろうか?
あと、リアちゃんのことも気になる。
なんとなく、自分の能力への予感がある。
できればほかの力がよかったが、
それでも誰にでもない力であるならそれを上手に利用して
かならず汎用性のある力に利用することができるはずだ。
明日もう一度リアちゃんに会いに行くことをミリアムさんにお願いしてみよう。
『クレア』
(聖騎士;大天使;ラファエル)
二十二才、ナンバーは九。
医療への適性が強く、次に武力の適性が強い。
聖騎士団と医療部門に所属し、回復や医療の要となっている。
現在の数少ない天使転生のひとりであり、守護天使はラファエルである。
回復魔法が使え、四肢の欠損や内臓損傷まで治すことができる。