ミリアムとお出かけ その二
村のなかはある程度整備されてはいるがそれでもかなり自然が残っている。
日本の比較的大きな都市に住んでたぼくにはすごく新鮮だ。
自然のなか、PHSの音におびえることなく、美少女とお散歩。
自分の中に幸せホルモンがばんばん分泌されているのがわかる。
「あの少し小高いところに立っているお屋敷が村長さんのお宅です。」
村長さんの家は明らかに周囲よりも裕福なのが一見してよくわかる。
村長さんはマヌアという五十前後の男性である。
ぱっと見た感じ気難しい感じの人ではなく、信頼してもよさそうな顔つきだ。
医者という仕事柄短時間にその人の表情や所作から
健康状態、性格を把握するのは得意だ。
「ミリアムさん、こちらの男性は?
あー、こちらが昨日騒ぎになっていた人ですか。
えー、連絡はきてますよ。
なんでも記憶喪失だとか。
こんな村ですが、行くあてが見つかるまでここにいてくださって構いませんよ。」
「あのー、マヌアさん、リアちゃんの様子はどうですか。
今日この後にクレアさまに会う予定があるので
その前に変化がないか聞いておきたいと思って。」
リアちゃんというのはマヌアさんの六歳になる娘さんだ。
半年前から病で伏せているとのことだ。
原因はよくわからないらしい。
「変わりないですよ。
ここ数日は気分がいいらしいですので、よければ会って行ってやってください。
リアも喜ぶと思います。」
「リアちゃん、こんにちは。」
「ミリアムおねーちゃん!」
リアはベッドから体をゆっくり起こしてミリアムにあどけない笑顔を向ける。
「今日は治療しに来たわけではなくてこのあとクレアさまに会うのでその前にちょっとのぞきに来ただけだよ。
すこし調子がいいみたいだね。」
「はいこれ。クッキー持ってきたんだ。
私が焼いたんだよ。あとで食べてね。」
「よかったー。リア、あの注射もう嫌だなぁー。
痛いし、あれするとしばらく調子が悪いんだもん。」
「そんなこといわないの。
だれでも受けられる治療じゃないのよ。
お父さんが聖国のお知り合いにお願いして特別にしてもらえてるんだから。
リアちゃんも頑張らないとね。」
村長さんの家を後にして、教会に向かう。
「リアちゃん、なんの病気なんですか?」
「それがよくわからないんです。
もう半年近くほとんどベッドから出られない状況で。
半年前にこの村で軽い流行り病があったんです。
ほかの人はみんなすぐによくなったんですが、
リアちゃんだけはなかなかよくならなくって。
今日みたいに調子がいい日もあるみたいなんだけど。」
「そのぉ、病気は魔法で治ったりしないんですか?」
「そんな夢みたいな魔法があったらいいですね。
ちょっとしたケガとかなら私でも魔法で治してあげることができるんですが、
病気はダメですね。」
「えー!!
ミリアムさん、魔法使えるんですか?」
「そりゃそうじゃなければ診療所づとめなんてできないですよ。
まぁちょっとですけどね。
でもこの後会うクレアさまはどんなケガでも魔法ですぐに直してくれる
この聖国で一番の白魔法の使い手なんですよ。」