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ドクター天魔転生  作者: とねのき
第一章 聖王国
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転生初日 ミリアムとの出会い

(さて、まずはこの世界の情報収集からだな。)


(この診療所からみると時代は古そうだ。

異世界転生じゃなくて過去へのタイムリープの可能性もまだあるな。)




 ガチャ。

 部屋の扉が開く。

 女性がひとり入ってくる。


「あら、起きてらしたんですね。」


(言葉はわかる!)


 女性は素早くこちらにちかずいてくる。

 顔を覗き込まれ手足を素早く観察されるのがわかる。

 女性は十代後半、まだ顔にはまだあどけなさが残る。

 美人というわけではないが優しい顔立ちで、

 どんな人からも嫌われない、笑顔が似合いそうな女性だ。




「村のすぐそばの街道のはずれで倒れているところを発見されて、

 昨日ここに運び込まれたんですよ。

 特に外傷はなかったので寝かせておいただけですけどね。」


「どうですか、どこか体調がおかしいところはありませんか?」


「申し遅れました、この村の診療所に勤めているミリアムと申します。」


 女性は僕に優しく微笑みかけた。




 ぼくはあらかじめ決めてあった質問を投げかける。


「どうも記憶喪失みたいなんです。

 自分が誰なのか、ここがどこなのかもわからないみたいです。」


「ここはどこですか?時代とかは?」

「あの、言葉はわかりますか?」




 ミリアムがベッドわきにぼくと同じ視線になるようにしゃがみ込み、

 ぼくの不安に共感を示しながら答える。

 彼女は若く見えるがこの診療所でそれなりに経験を積んでいるのかもしれない。



「言葉ですか?わかりますよ。

 この世界に言葉はひとつしかないのでわかるもわからないもないですけどね。

 大丈夫ですか?」




 ミリアムに聞いた情報を整理する。

 タイムリープではない、やはり異世界転生であった。


 この診療所のある村はエリム村。

 ここから三十キロぐらい西に行くとイルディア聖国という王国があり

 そこが文化の中心らしい。


 聖国とある通りやはり骨幹をなすのは宗教であるとのことだ。

 無宗教で会った日本人の僕にはわかりにくいが、

 中世の文化レベルに近いこの異世界では、

 宗教の影響というのがぼくが想像する以上に強く生活の一部になっているのだろう。


 このエリム村もその宗教圏であり、この診療所も協会の所属ということだ。

 文化レベルというのは現代の日本人の僕が想像する中世のヨーロッパといったところだ。

 そして重要なことだがやはりこの世界には魔法があり、

 悪魔が存在するということであった。


 ただ魔法というのは日常的に普及しているものではなく、

 ごく一部の人が使える程度のものであり、

 ミリアムも詳しくは知らないということであった。


 悪魔に関しても聖国周囲は討伐されており、

 結界が張られているためミリアムは見たことがないとのことであった。


 そしてその魔法による戦闘と結界の存在が天使の加護によるものであり、

 それゆえに宗教の存在が疑われることなく文化に根ずいている理由ということらしい。




「ぼくは自分自身の記憶も失っているようでなにも思い出せないのですが、

 ぼくのこと知っている人はいないのでしょうか?」


「ごめんなさい。

 あなたが昨日ここに運び込まれたことはこの村にとってはひと騒動であったので、

 多くの人があなたを見に来ていたのですが、

 あなたのことを知っている人はいませんでした。

 少なくともこの村の人ではないようです。

 でも心配しないでください。

 あなたが記憶が戻るまでここで療養してくださって構いません。

 教会はいつでも病気のかたの味方です。」


 ぼくはこの世界では立場が逆転、患者さんになったようだ。

 しばらくその言葉に甘えることにしよう。

 ぼくが鏡で確認したこのぼくの身体は、

 ぼくの転生のために新たに用意されたものなのだろうか、

 それとももともとこの世界に存在していた身体に精神が入れ替わるように入ったのだろうか。


(んー、異世界転生も簡単じゃないな。

 必要な情報がまだ少なすぎる。

 でも知らないことが多いということはこれから知る世界が広いということ!)


 ぼくは不安よりもRPGゲームを始めたばかりのような、

 これから始まる冒険への期待感に胸を躍らせていた。

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