前世パンツ、今人間
生まれて感謝、作られてありがとう、
一体、私は何の為に人間に生まれたのだろうか、
ちなみに私の前世はパンツです
自分がパンツだったことを思い出した。
真っ白なパンツ。
極みなき白、白パンツ。
世界の神秘にして最後のフロンティア。
「私、前世パンツなんだけど」
中学生デビューを決めようと正直に言った私は、次の日からパンツ女とクラス中から言われた。
先生は、いじめです!と怒っていたが、私は嬉しかった。
なぜなら友達も親も、自分がパンツだったと言っても馬鹿言ってんじゃないわよと言うのだから。
心からパンツだと認めてくれる級友に感謝だ。
学校に入って私には友達ができた。
エミリーちゃんと、アイナちゃんだ。
他にもたくさん友達は出来たけど、二人は特別な仲だ。
エミリーちゃんは三角形で、黄色い地に花柄の"容姿"で、いつも相田彩とかいう人間をつけている。
相田彩とかいう人間とは友達じゃない。
この相田という人間は、まるでエミリーちゃんを物のようにいうのだ。
『あ、え?これ?黄色いパンツのこと?まあまあ気にってはいてるよ』
はいてるよ……じゃない!この人間風情がなんと無礼なのか。エミリーちゃんに履かせてもらってんだろう!全くこれだから毛無し猿が。
それからアイナちゃんは、私とは反対色に当たる黒い見た目をしている。
彼女は本当に凛としていて黒い見た目がまたかっこよくて美人なのだ。
私は同じ女もののパンツながら惚れた。
そして、彼女が履くことを許している人間を手紙で呼び出し、校舎裏で告白した。
あのクソ女、ほんと腹立つ。
何がパンツ女よ。
……私はパンツよ!!
それに告白したのだってアイナちゃんで、あのウワモノの毛無し猿にじゃないの!
それなのに……。アイナちゃんは告白を受け入れてくれたのに、あの、なんてかっていう人間は……!
『私たち、女同士だしね……いや、ごめんね?』
とか断ってきやがったの!ほんとムカつく。だから、押し倒して、剥ぎ取ってやったわ。
それから、私は……。
警察に連行された。
あの、アイナちゃんがはかれることを許可していた人間の親に、性的暴行をしたとか言われのない罪を言われて。
私は、ただアイナちゃんに自由を与えたかっただけなのに。
私は人間に生まれ変わっても心はパンツなんだ。だから、パンツの気持ちはよくわかる。
あの人間はアイナちゃんにふさわしくなかった。
だからパンツから人間に生まれ変わった私が、アイナちゃんにふさわしいんだって。
友達はできた。級友はパンツパンツと私を呼んでくれる。
でももう会えない。
アイナちゃんも無理矢理引き剥がされて、私は精神病院とかいう場所に閉じ込められた。
ここで私をパンツと言ってくれる人間は少ない。
それに皆ズボンを履いてパンツと会えない。
悲しい。
人間の私の親は、貴方は病んでいるから……といった。病んでない。
アンタなんか親じゃない。
アンタなんか、ただの妖怪厚化粧ババアだ!!!!!
私の、親は、工場でミシンを動かしていたあの優しい笑顔の人。
一枚の白い布から私を生み出してくれたことを忘れない。
出会いと別れは一瞬だったけれど、今でも覚えている。
パンツだった私が人間という別のものになっても覚えている。
人間に生まれ変わって何度絶望したことか。誰かにはかれることで満たされるパンツにおいて誰にもはかれない人間というのは本当に辛かった。
精神病院という箪笥のようなものに閉じ込められて5年。
ようやく気づいた。
人間が言う、神さまという存在がいるならば、
私は、私を作ったあの人にお礼を言う為に生まれ変わったのだと!
私はいてもたってもいられなかった。
仲良くなった精神病院に入れられていた漂白おじさんに頼んで騒ぎを起こしてもらうことにした。
漂白おじさんは凄く頭のいい人で、それでいて人間で唯一私と気があう人だった。
前世にもし彼と会えたら、パンツと人。種族を超えて愛し会えただろう。
彼、漂白おじさんは、白いものが好きな人だ。
だから、表札でも横断歩道でもタクシーだろうが白かったら好きになってしまう。彼のようなステキな人が特定の伴侶を持たないのは仕方がないかも知れないね。
私は白いパンツだったと知った漂白おじさんは、私のガバガバな計画を変え巧妙にしてくれた。
漂白おじさんは、病院で騒ぎを起こした。
情緒不安定な人たちに、医者が一生ここに閉じ込めて殺そうとしていると囁き、証拠(嘘)を見せ、現場(作った)を確認させ、反乱を起こした。
反乱が起こり病院内が荒れる中、私は漂白おじさんにお別れのキスをした。
なんとなくもう会えないと思った。
窓を破り外に出ようとする私に漂白おじさんは声をかけてきた。
「好きだ」
「え?……」
「ごめん、なんでもない」
「うそ」
「もちろん」
「何それ」
「私が、白くない人を好きになるわけないだろ?」
「それもそうね。あ、おじさんじゃね」
「ああ……うん、白いな……」
「どしたの?」
「いや、なんでもない。いけ、行くんだ!誰にも捕まるな!
お前だけでも幸せになれ!!頑張れ」
「ありがとう」
そう言って3階から飛び降りた。
足から血が出ていたけれど痛くはなかった。
私は走った。
途中、国家の犬に道を阻まれ、それを蹴飛ばし、胸元をちらつかせヒッチハイクしスポーツカーで風のように走り、前世の私を履いていた人間がやっていた少林寺拳法を見よう見まねで使って不良どもとタイマンはって金を巻き上げ、新幹線に乗って太陽より早く走った。
そして、私はたどり着いた。
製縫工場に!!!!!
そして私は、見た。ほんとの母を。
何処からともなくやってきていた警察どもに見つからないよう隠れていたマンホールから飛び出した。
国家の犬どもが何かを叫んでいた。
私は無視して母に、すがりついた。
「な、何!?」
「ママァ……ママ!会いたかったよ……」
ああ、お母さん!お母さんだ!嬉しい!会えた!ああ!!
お母さん!お母さんお母さん!!!!!
「ちょ。私、子供なんて!」
そう、だよね。
私のことなんかいちいち覚えてない……よね。
「ごめんね、ママ。いいよ、私のことを覚えてなくても私はママに作ってもらえたこと、ずっと覚えてたんだ……」
「…………」
「もう一度会えて嬉しい」
「そう……」
「私は…………………… . .. . .
一部の人には好評だった……何故?