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「夢香さん、起きてください」
うーん。
「起きてください。時間ですよ。会社へ行く準備をしてください」
お願い。
あと5分、寝かせて。
「夢香さん、起きてください」
優しく揺らされる私の身体。
私は完全に目が覚めた。
「おはようございます、夢香さん」
ベッドの横に立って、私を起こしてくれたのはTー27型ロボットの「ミント」。
名前は私がつけた。
Tー27は古い型でボディはすらりとした男性と女性の中間のデザイン。
最新モデルと違って、まだまだロボット感が残ってる。
顔はマネキンみたいで、ある程度の感情表現が出来る。
もちろん、ロボットのAIには本当に感情は無いのだけれど。
人類が火星に住むようになって、もう100年が経つ。
いまや人類は1世帯につき、1台のロボットをもつのが当たり前の時代になった。
就職を機に独り暮らしを始めた私も、ロボットを買うことにした。
ロボット販売店の女性店員は、しきりに最新型を勧めてきた。