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3話
街路樹に背中を預けているむつは、どうしようかな、と意外と暢気だった。だが、暢気であっても余裕はない。
先程よりも風が強くなり、背にしている街路樹がめきめきと音を立てている。このまま、ここに居れば風避けにしている木が無くなるのも時間の問題だ。それにコートを羽織っていないのだから、凍死なんて可能性も出てくる。寒さに弱いむつはそれを思うと、ぶるっと身震いした。
風の正体を見極めて、さっさと山上の所に戻るが1番と、ひょこっと顔を出したむつはだったが、慌てて引っ込める事となった。
何が飛んできて、むつの顔の横を通りすぎていった。その勢いからして、風で飛ばされただけとは思えない。
体勢を変えようと、街路樹を正面にするようにしたむつは、そろそろと顔を出した。そのタイミングを狙うかのように、また何かが飛んできた。こうなると、むつを狙ってわざとのようにしか思えなくなってくる。




