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3話
きりりとしたむつの目を見た山上は、少し悩んだようだったが、ここはむつに任せると決めたようだった。何が起きているのか分からず、このまま立っていては身の危険が増すだけだ。
「…どうする?」
「………」
ぐいっと山上を引き寄せ、耳元でぼそぼそっと何をするのか伝えると、勿論の事、山上は良いとは言わなかった。だが、山上としても他の方法は思い付かない。山上を盾にしたまま、きょろきょろと辺りを見たむつは、大丈夫だと頷いた。
「ちっ…タイミング間違えるなよ‼」
ふんっと笑ったむつは、じりっと下がると助手席のドアを開けた。そこから山上がするっと入り込むと、すぐに運転席に回った。ばたんっとドアを閉めたむつは、吹いてくる風に背中を向けて駆け出した。




