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3話
「…っ‼大丈夫か、むつ!!」
「ん、うん…車から出るんじゃなかった」
「それは言えてるな」
山上は車体に手をついて、むつは押されてくる山上を押し返すようにして風に耐えていた。ほんの少しの間だというのに、山上のコートには雪が積もっている。
「…車に戻る?颯介さんも危なくない?」
風が強すぎるせいで、むつは大きな声を出していた。山上は同感だと頷いた。だが、少し動くにしても危険だった。今、足を浮かせるような事をすれば、そのまま風に拐われてしまう。むつも山上も、そんな風に思っていた。それほどまでに、風は強くなっていた。
「…むつ、お前ならどうする?こんな時」
こんな時というのは、風が強すぎて身動きが取れない時なのか、それとも尋常ではない風をどうするかなのか、むつは判断に迷った。
「何が起きてるのか確認する…」
「…じゃないと、対処に失敗する可能性があるからな。でも、危険じゃねぇか?」
「ちらっと見れたらいい。とりあえず、颯介さんを送るのは辞める…何がどうなってるのか分からないけど…1人にはしない」




