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3話
事務所を出た時にも吹雪いていたが、今もその勢いはおさまらない。傘をぎゅっと握りながら、むつは山上に寄り添うように立った。
「…社長。颯介さんそのまんまにしといて。それより、他を気にしてくれる?」
「…ったく、こんな時に何だ」
ぱたんっとドアを閉めた山上は、何かに気付いているのか、むつの手から傘を取った。
びゅっと一段と強い風が吹き付けると、山上はむつの肩を抱きながら傘を少し前に倒した。吹き上げてくる雪が、びしびしと身体に当たり、それは痛いくらいでもあった。
風は吹き止まず、山上は耐えきらなくなったように傘を手放した。あっという間に、飛ばされた傘は、すでに原型を留めていなかった。山上はむつの盾になるように、吹いてくる風に背を向けた。だが、その風の勢いがありすぎるからか、少し押されているようだった。




