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2話
じゃらじゃらとチェーンを鳴らしながら、社用車のある駐車場に来たむつは、ちっと舌打ちを鳴らした。こんなにも天気が急変するとは、思いもしなかったのだ。
それに何となく、この雪は嫌だった。毎年、少しでも雪が降れば喜んだが、今の雪には喜べない。
かじかむ手に息を当てて、少しでも暖めるとむつはコートを脱いで車に入れるとエンジンをかけた。そして、膝をつくとチェーンを置いた。
普段、雪など降らない。ましてや積もるような所に、住んでいるわけでもないというのに、チェーンをつけるむつの手つきは慣れた物だった。しっかりとチェーンが巻けた事を確認すると、車に乗り込んで事務所に電話をした。
『はい、谷代です』
「チェーン巻けたよーん。2人に下に出てくるように伝えといて。祐斗、悪いけど…留守番お願いするね。後…ちょっと気を付けといて」
『…分かりました。むつさんも気を付けて』
「うん、ありがとう」
少しふざけたようなむつの口調には何も言わず、祐斗は固い声で返事をすると電話を切った。むつは颯介と山上を待たせないようにと、ゆっくり車を発進させた。




