87/1090
2話
「西原さん、どうするんですか?」
「来させる。待たせとく。戻ってくるから…颯介さん、何かやっぱ様子がおかしいもん…聞かせたくない」
「なら、俺は西原さん待ってますから…気を付けて行ってきてくださいよ?この天気ですし」
「大丈夫、大丈夫。チェーンあるはずだし」
むつはそう言うと、社用車の鍵、鞄から携帯と財布を取り出した。それをコートのポケットに突っ込むと、倉庫に入っていった。ごそごそと何かを探し出すと、山上に車を回してくると伝えて、すぐに出ていった。
「…むつさん、タイヤにチェーン巻いてくるそうです。意外と慣れてるみたいですね」
「そうだな。あいつは意外と慣れてるぞ…運転だけなら、誰よりも上手いかもしれないな」
「そんなにですか!?」
「ん、あぁ…あいつ…何だろうな。車好きってわけじゃねぇけど…ほら、バイクもさ。うちの子が、とかって言うだろ?身体の一部みたいな感じになるんだとよ」
山上はむつの運転を信用しきっているようで、コートを羽織って出ていく用意をしていた。




