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2話
変に気を遣いあっていた雰囲気がなくなると、山上もこっそりと安堵していた。だが、話が一段落した感じで沈黙してしまうと、どことなく気まずさがある。
「はっ…」
「ん?」
「あっ‼」
息を飲むようにして、むつが少し首を反らせると向かい側に座っていた颯介が、慌てて立ち上がりむつの手からマグカップを取った。
「は…くじゅっ‼」
「………」
ずるずると鼻をすすったむつは立ち上がると、事務机に置いてあるティッシュの箱とゴミ箱を持って戻ってきた。鼻をかんで、丸めたティッシュを捨てると、へへっと笑っている。
「むっちゃん風邪だね。もう…寒がりの癖にあんな事するから…ほら、ヒーターの前で暖まっておいで」
「ひ弱ですね」
マグカップを受け取り、祐斗の頭をぱしんっと叩いたむつは、大人しくヒーターの前に座って、また盛大なくしゃみをして鼻をすすった。




