2話
「…むっちゃん?」
マグカップを持ったまま、むつはゆっくりとうつ向いていった。祐斗はむつの隣に居るからか、どうかしたのかと顔を覗きこんだ。
「聞いて良かったのかなって…だってね、お家の事って言いにくいでしょ?あたしは言いにくかったもん。なのに、颯介さんにあれこれ聞いちゃって…悪い事しちゃった。ごめんね」
「そんな事は…俺の方こそごめんね。こんなに2人に心配かけて。歳上のくせに、みっともなかったね」
「ううん、そんな事ない」
泣いたのかと思ったが、泣きそうというくらいで堪えているむつがゆっくりと顔を上げた。
「…いや、みっともないよ。実は今朝さ、仕事行きたくないなーってだらだらしちゃってね。2人が心配してくれてるのは分かってても、もし弟が来たら嫌だなって思ってるのもあって。それで2度寝なんかしちゃって…そしたら、管狐には噛まれるし大遅刻だしでね」
颯介が鼻先を撫でていると、するっと出てきた管狐が首を傾げるようにして、颯介の手の動きを見ていた。
「たまには、そんな日だってあっていいだろ?それに、こうして来て話をしてくれたんだ。みっともない所なんか、どこにもねぇよ」
「そうですよ。こんだけ雪も積もってて寒いのに、会社休みにならないのか、って思うと俺も朝は憂鬱でしたよ」
「あ、あたしもそれは思った。でも来て良かった…颯介さんからお話聞けたし、遊べたし。何か、こうして皆でご飯食べてゆっくりするの久しぶりな気もするし」
「そうだね。俺も…話せて良かった」
颯介が笑みを見せると、むつと祐斗はほっとしたような顔をした。




