2話
「…何で?弟さん来るかもしれないっていうのに…何で昨日帰っちゃったの?」
「え?あ、いや…」
「…ごめん。やっぱり、いいよ。本当に体調も悪そうにも見えたし…」
「………」
すっかり冷めたコーヒーを入れ直すと言い、むつがマグカップをお盆に乗せて立ち上がると、祐斗もついでにと食べ終えた丼やら皿を片付けて、キッチンに持って行った。
「むつにも祐斗にも誤魔化しはきかねぇぞ?祐斗もなかなか…湯野ちゃんにも似てきて、引かない時は引かねぇな」
「祐斗君、観察力ついてきたみたいですね」
「あぁ、ここ1年ちょっとであんなにも人って変わるもんなんだな。むつだって、最近も…勝手に動くし心配ばっかりかけさせるけど、変わったな。何があったのか、ちゃんと話すようになった。事後報告でもいいんだぜ?」
「…えぇ、でも言いかけてますから。話しますよ。むっちゃんと祐斗君も納得しないでしょうからね」
「だろうな。昨日、みやから連絡貰ったんだけどな…あいつら、みやと西原呼び出して、湯野ちゃんの事って全然知らないし、元気ないなら何とかしたいって言ってたそうだ」
「だから…か。昨日…やけにむっちゃんはくっついてくるし、社長に内緒で鍋して泊まろうなんて言ってましたから」
「俺に内緒な…ふぅん。おっさんははぶりか」
ふんっと山上は鼻を鳴らして、灰皿にタバコを押し付けた。




