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2話
「お、珍しくむつは食いきりそうだな」
「うーん…厳しい。もうお腹いっぱいだし」
半分ほど食べた所で、むつは器を山上の前に押しやった。チャーハンや餃子などの単品を食べたわでもないが、むつはもう食べれないという事だ。食欲が戻ってきたのかと、喜びかけた山上だったが、仕方なさそうにむつの残りに箸をつけた。
「こうやって俺らは太らされるわけだ」
「太らないくせに…」
「寒いからな。体温を保つ為にエネルギーを使ってるんだ」
ずずっずずっと麺をすすりながら、山上は少し太ったかもしれないと腹の辺りをさすっている。普段、運動しているようでもなく、しょっちゅう呑みに出ているわりに、山上の身体は引き締まっている。
「…湯野ちゃんも食欲ないのか?飯食わねぇやつが増えても楽しくねぇな。なぁ祐斗?お前は食えよ?大きくなれないぞ?」
「はぁい…」
ラーメンもチャーハンもさっせと口に運んでいる祐斗の食欲は、以前にも増しているようだった。




