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11話
「まぁ冗談はさておき…颯介さんが追いかけ回されたって事はさ…らせつちゃんも居るし、あたしたち結構危ない?」
「そうなるかな?」
危機感なさそうなむつに対して、颯介は爽やかな笑みを見せていた。いつもの笑みが見れた事は嬉しくも思うが、暢気に構えていられる状況ではないという事だ。
「颯介さん、とにかく凪君とさゆきって子を…あ、さゆきちゃんは山の神の所?」
今までは無関係な顔をしていたらせつだったが、むつがぱっと振り向くと驚いたように、ぶんぶんと横に顔を振った。
「知らない。1回は戻ってきたけど…その後は、ずっとちちの所だったから」
「…どんな様子だったか分かる?」
「さゆきねぇさん?んー…変だった。話もしないし、ずっと怒ったような顔してた」
「そう…」
下唇を指でなぞりながら、むつは何やら考え込んでいるようだった。だが、ややあってから灰皿とタバコを掴むと、四つん這いでらせつの隣に移動した。




