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11話
「ま、そりゃあ家にいつかなくなるのも当たり前だ。湯野ちゃんはそろそろ恋をしろ」
「女性じゃないんですが…その…まぁ…」
居ます、と颯介が呟いた。すると、またしても祐斗が茶を吹き出した。むつと山上に、じろりと睨まれた祐斗は、そそくさと茶をふいた。
「成る程な。湯野ちゃんに女の影がないのは、そういう事か。ふん、分かった」
「納得した。そこまで意外でもなかった」
ね、とむつと山上は顔を見合わせた。2人にはどこかしら、心当たりでもあったのかもしれない。颯介のやんわりとしたカミングアウトも、あっさりと受け入れていた。
「今度紹介してね?」
「え?あ…機会があったら…」
「あ、やったーっ‼じゃあ社長洋服買ってね」
「はっ!?何でだよ‼」
「お洒落したいもん‼颯介さんの同僚が地味な上に不細工じゃ申し訳が立たないもの。せめて、装いだけでも」
「…買い物には付き合ってやる」
買ってはやらんと山上は言ったが、むつは何故かこういうおねだりだけは成功させるのだった。




