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はじまり
身体の小さな少年は、何度もまばたきを繰り返した。ようやく、焦点があってきたのか、男を見上げてふにゃっと笑った。
「にーちゃんっ‼」
少年が腕を伸ばすと、男が少し困ったような顔をした。本来ならば、手を伸ばして応えてやるべきなのだが、男にはそれが、すぐには出来なかった。だが、おずおずと手を伸ばして、うろの中に大きな身体を入れるようにして、少年を抱き上げた。
「なぎ…」
「にーちゃんっ‼にーちゃんっ‼」
なぎと呼ばれている少年は、にこにこしながら、にーちゃんと何度も呼んでは、はしゃぐように足をばたばたとさせている。
「なぎ、こんな所まで1人で来たのか?」
「ううん‼一緒に来たよ」
少年がうろの方を指差すと、後からするっと管狐が出てきた。男が連れていた管狐と全く同じだが、男のは別に居る。
「そうか…管狐に案内させたな?まったく…困ったもんだな。まぁいいか、見付かったしな。帰るぞ?雪が酷くなってきてるから」
「うん‼あ、待って」