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11話
山上が土間でしていたのは、食事の支度だった。雑穀の混ざった粥に溶き卵とネギがたっぷりと入っているだけの、簡単な物ではあったが凄く美味しい。山上が手料理を振る舞うなど、今までになかっただけに尚更美味しく感じる。むつが本当に美味しそうに食べているからか、らせつが羨ましそうに見ている。
「…ちびっ子も食うか?このまんまじゃ熱いけど、雪入れて冷やしたら食えるんじゃないか?」
返事を待たずに、らせつの分もよそってお椀を置いた山上は、すぐにらせつから視線を外して、ずるずると粥をすすった。山上の素っ気ない態度が嫌なようではあったが、らせつは盥の雪をお椀に入れてスプーンでくるくると混ぜて冷した。
一口すすったらせつは、美味しと言って笑みを浮かべたが、それが恥ずかしくなったのか、その後は黙っていた。そんな様子を見て、お椀で口元を隠してはいたが、山上が嬉しそうな笑みを浮かべているのを、むつは気付いて見てみぬふりをしていた。