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11話
「…むつさん、らせつちゃんどうしますか?」
「後で考える。今更…急いでも手遅れよ」
どうしようもない、と呟いたむつは祐斗の膝に隠れるようにして居る管狐に、手を伸ばして頭を撫でた。むつが怒ってないと分かってか、管狐はそろそろとむつの肩に上ってきた。
「昨日はありがと。祐斗もちゃんと管狐にお礼言いなよ?管狐のおかげで助かったし、2人と会えたんだから」
「はい…管狐、ありがとうな。むつさんもありがとうございます…朝、社長から聞きました」
「うん、無事で良かったよ。祐斗もありがとうね…らせつちゃん守ろうとしたんだって?いつの間にか…男らしくなったね」
ふふっと笑ったむつは祐斗の頬をむにっと摘まんでから、さっさと立ち上がると土間の方に向かっていく。祐斗は摘ままれた頬を撫でながら、ほんの少し照れたように笑っていた。