688/1090
11話
ホテルを出てからの、らせつが一緒に居る事までをしっかりと思い出したむつは、ぽんっと手を打った。
「らせつちゃん、おはよ」
暢気なむつは、笑みを浮かべてひらひらと手を振りながららせつに挨拶をした。囲炉裏の側だと暖かいからなのか、らせつは土間に近い所からむつに手を振り返している。そんな2人の仲の良さそうな感じに、颯介は困ったような顔をしていた。
「ん、あれ…?」
らせつが1人きりで居るのかと思ったが、その膝の上には見慣れた姿がある。首を傾げながら祐斗の方を見ると、そこにも同じ姿のものが居る。
「管狐…あっ‼あたしに噛み付いたのは颯介さんの管狐か‼てっきり凪君の管狐が来てくれたんだと思ってたや」
「今頃、分かったのかい?だから、ごめんねって言ってたのに…むっちゃん…」
颯介が謝ってきた理由も分かり、むつはあははと笑っていた。成る程、颯介の管狐であれば噛み付いてきたのも分かる気がする。
「むつはまだボケてるみたいだな」
やれやれと言いながら、山上は立ち上がると土間に下りていった。