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11話
山上と共に寝床についたむつは、よろず屋に入ってから、全員が同じ部屋で雑魚寝するのは初めてだという事に気付いた。社長である山上が現場に出てきて、泊まり込むなんて事は今までに無かった。それだけに不思議でもあり、嬉しくもあった。それに暖房がなくても、皆で居るからか暖かい。人の温もりとは、こういうものかもしれない。そんな事を思いながら、とろとろと眠りにつき、明るくなるまで目を覚ますことはなかった。
日光に反射する雪が眩しくて、障子越しにも明るくなってきた事がよく分かる。そんな太陽が高くなった頃、ようやく目を覚ましたむつは、寒さに身を震わせながら寝返りを打っていた。薄く開いている目に映るのは、見慣れない部屋。それに何でか、身体の節々が痛む。怠いと思いながら、もぞもぞと布団に頭まで潜ったむつだったが、はっとしたように顔を出して、布団を蹴るようにして飛び起きた。
昨夜、寝ようと山上と共に部屋に来た時には、それぞれの布団には人が居たというのに、今は誰も居ない。焦りを感じつつ、むつは勢いよく板戸を開けた。