11話
「あたしも女よ?」
「だから、怖いんだ。なぁ、むつ…そろそろ休んでくれないか?」
「…その間に居なくなるから?」
「そうじゃねぇよ。熱があるやつが居たら、足手まといになる。お前だけ置いてくぞ?」
祐斗は連れていくけどな、と山上が呟くと、むすっとした表情のむつは山上のタバコを1本取り出して火をつけた。そして、ぷーっと山上に向けて煙を吐き出した。
「…子供みてぇな事しやがって」
「ふんっ‼社長も寝るなら寝る…颯介さんも本当に寝ちゃったのかしら?」
「そうじゃないか?湯野ちゃんも疲れてただろうしな…こっち来てからは車ん中で寝てたらしいぞ」
「そう…明日、少しでも話出来たらいいな」
「出来るだろ。ここには、俺もお前も居るんだ、黙って出ていくのは難しいと思うからな」
「ん、なら…寝る。社長も部屋行こうよ」
「仕方ねぇな…行くぞ。あ、その前に、トイレは寝てる部屋の向こうだ。障子があったろ?そこから出たら廊下になってるから」
「はーい…それなら、先にお手洗い行ってくる。待ってて‼」
「一緒に行ってやろうか?」
「そこまで怖がりじゃないっ‼」
暗そうで怖いのか、と山上が笑いだすとむつは頬を膨らませたが、反論はしなかった。