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11話
よく見てるんだな、と山上が言うとむつは微笑みながら頷いた。むつが優しい子だというのは知っていたが、こんなに優しく柔らかい表情を見せるようになった事に、山上は少しおかしくて笑ってしまった。能力が使えなくなった事は、むつに色々な経験と影響を与えたという事だろう。
「それで…思い当たる事ってのは何だ?」
「あ、うん…あのね、遥和さんからの依頼の時の事なんだけど…」
山上の表情の変化には気付かなかったかもむつは、タバコを灰皿で揉み消すと祐斗とちかげに聞かせた事を、山上にも話した。山上はむつの話を聞きながら、タバコをくわえたが火はつけなかった。
「あぁ…そうか…その子供じゃないにしても、何かしらの術者がって可能性は十分にあるな」
「あたし…まだ、術者っぽい人に出会った事がないのよね。その子供以外だと」
「俺もないな」
「え?そうなの?じゃあ…仮に術がかけられてたとしても、解く方法見付けようがないんじゃ」