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11話
「…あそこに居たのってね、山の神の所に行ってたからじゃないの?」
「…お前、俺の正体」
「知ってるわよ。知ってる…前からね」
「そうか…隠してたつもりなんだけどな」
「今の状態のあたしなら気付かなかったかもしれないけどね…それにね、あの山でちかと会ったの。それで…雪女たちは山神の子供みたいなものだって言ってて、もしかしたら社長もそこかなって…大丈夫、祐斗は何も知らない。ちかは知ってると思うけどね」
「あぁ…あいつは初対面で俺の正体には気付いてたからな。まぁどこまで気付いてるかは知らないがな」
「そう…それで…?」
「むつの言った通り、山の神の所に行ったんだ。何かしらの話が聞けるかもしれないからな…」
「何か聞けた?」
「この場所を借りる事が出来たくらいだな。後は…さゆきって子を元に戻せるならって言ってたぞ。湯野ちゃんの弟の事には触れなかったけど…怒ってるんだろうな。人と馴れ合うから、こうなったんだってな…」
「まぁ…仕方ないか」
むつはこてんっと山上にもたれた。山上がぽんっとタバコの箱を投げて寄越すと、そこから1本抜いて囲炉裏の火を使った。