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11話
「ここは?」
「借りた家だ」
「誰からって聞いたら困る?」
「まぁな…詳しくは何も聞くな」
じっと山上を見ていると、山上もむつを正面から見てきた。見慣れた顔には、いささか疲労が浮かんでいるようにも見える。そんな疲れた顔をしている山上に、あれやこれやと聞くのは悪い気もしたが、やはり聞かずには居られない。
「…祐斗は?」
「向こうで寝てただろ?居ないか?」
山上が首を傾げながら立ち上がると、むつは後をついていった。そして少し開けられた板戸から、覗くようにして中を見た。
「あ、居た…気付かなかった」
「祐斗も雪女も居るから大丈夫だ」
ぐりっと頭を撫でられたむつは山上を見上げた。それが嬉しくて、むつは少し泣きそうになったが、ごしごしと目元を擦って誤魔化した。颯介と山上はそんのむつに気付いて、ほんの少し笑みを浮かべたが、見てみぬふりをした。