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11話
「お前、寝ちまったからな…しばらくは火鉢にかざしておいたけど、大丈夫そうか?」
「うん…動かしにくい」
「まだ完全じゃないんだな。暖めとけ」
目の前には古風にも囲炉裏があり、そこにはやかんがかけてある。むつは言われた通りに、火に手をかざした。暖かい炎は、ぱちぱちと薪を燃やしている。
「はい。むっちゃん熱も少しあるし、身体も冷やさないようにしないとね」
かけてあったやかんから湯を注いだ湯飲みを、颯介がむつの前に置いた。むつはそれを両手で持ち、手を暖めながら辺りを見回した。
高い天井と土間には水回りがあり、部屋の真ん中に囲炉裏がどんっとある。他に部屋はないのか、戸があるのはむつが寝ていた所に続く所だけだった。