674/1090
11話
颯介の運転で、どこに向かうのかと気にしていたむつだったが、暖房はなくとも車内は暖かく感じられる。うとうととしてしまい、いつの間にか眠っていた。ふわふわした感じがする、そんな風に夢心地に思っていてが、目を覚ました時には見知らぬ所に居た。隣から、ひんやりとした空気が漂ってくるなと見れば、らせつがくうくうと眠っていた。
そっと起き出して、わずかに光が漏れている戸を開けた。板戸がからからと音を立てると、部屋に居て背中を向けていた2人が振り向いた。
「あぁ、起きたか…」
こくっと頷いたむつは後ろ手で戸を閉めると、声をかけてくれた山上の隣にすとんっと座った。
「手見せてみろ」
ぐいっと掴まれたが痛みはない。それどころか、ぞんざいそうに見えて手付きは優しかった。