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11話
「ほら、祐斗も起きたし…らせつちゃんも安心したでしょ?帰ろうよ、ね?」
祐斗が目を覚ましたのだ。らせつが気にする事は、もう何もないはずだ。だが、素直にうんとは言ってくれない。
「むつはうちと居るの嫌?」
「嫌じゃないけど…山の神と雪女たちを敵に回すってなると…勝てない喧嘩はしたくないからね」
「うちはむつと居たい‼」
「ただでさえ…雪女から睨まれてるのに、これ以上の敵を増やすのは…とりあえず、どうしよ?」
「仕方ない、このまんま移動するか」
「社長の所でいいですか?」
「あぁ。行くぞ、祐斗詰めろ」
さっと颯介が運転席に回り込み、山上が祐斗をぎゅうぎゅうと押すと、起きたばかりの祐斗は、驚きのあまり動けなくなっていた。
「えっ!?え、しゃ…社長っ!?」
「早くしろ、さみぃんだ」
どんっと突き飛ばされた祐斗は、またしても座席から落ちたが、何となく嬉しそうな顔をしていた。